富士山「登山鉄道」、山梨県がこだわる真の理由 富士吉田市は「電気バスで十分」と反対姿勢
新型コロナが5類に移行して以降、富士山の訪問客は急増している。スバルラインの5合目は登山者や観光客でごった返し、「渋谷のスクランブル交差点のような状況」(長崎知事)だ。訪問客を運ぶ自動車やバスからの排ガスが環境に与える影響は大きく、排ガス問題を食い止めるためのマイカー規制はすでに実施されている。一方で、規制対象外の大型観光バスの通行台数はむしろ増加傾向にある。そこで、スバルラインに登山鉄道の軌道を敷設することでマイカーや大型バスが乗り入れないようにしたいとする。
富士登山の玄関口としてはスバルライン5合目のほかに吉田口5合目、須走口5合目、御殿場口新5合目、富士宮口5合目などがあり、中でもスバルライン5合目が最も利用者が多いとされる。登山鉄道の乗車を全席予約制にすれば、富士登山者全体の人の流れもコントロールできる。曜日や季節に応じて運行本数を増減するが、需給に応じた変動料金にすることでも人の流れをコントロールする。
電気バスではだめなのか?
ここで1つの疑問が生じる。排ガスをなくすとともに5合目の訪問客をコントロールしたいのであれば、わざわざ鉄道を造らなくても専用の電気バスを運行してほかのマイカーや観光バスの乗り入れを制限すれば、それで十分なはずだ。最近はバスを無人運転で隊列走行させる技術の実用化も進み、鉄道に近い輸送力を発揮できるようになった。
なぜ電気バスではだめなのか。この理由について長崎知事は、「電気バスは通っていいが、ほかのバスは通行してはいけないというわけにはいかない」と話す。
しかし、JR大船渡線・気仙沼線BRT、JR日田彦山線BRT、かしてつバスなどには、一般の車両が走行できないバス専用道がある。この点について、県で富士山登山鉄道推進事業を担当する和泉正剛知事政策局次長は、「大船渡線・気仙沼線BRTと日田彦山線BRTは被災した鉄道路線をバス専用道として活用しており、かしてつバスは生活に密接に関わっていた鉄道が廃止されて、その代替手段としてバス専用道が認められた」と話し、スバルラインのような観光道路をそこまで規制するのは困難だとする。
だったら、いっそのこと道路を完全にやめて鉄道に切り替えればよさそうだが、その点については、災害などの非常時には緊急車両を通行できるようにするため、道路の機能は維持する必要があり、一般的な鉄道ではなく、LRTがよいということだった。
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