モトローラ、日本勢を横目にスマホ注力の背景 中国のレノボ傘下で「日本を強化地域」に設定

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価格帯も広げている。最先端スマホも発売するブランドだと認識してもらうのが狙いだ。従来は法人需要など値段の安さを重視した層へ2万円程度の製品を多く発売していた。今年8月に発売した折り畳み可能なスマホは、公式オンラインストアで15万5800円(税込み)と高価格だ。

Galaxyなどからも折り畳みスマホは発売されているが、折り畳んだ状態でPayPayでの支払いができるなど、「モトローラのアドバンテージがある」と松原社長は胸を張る。

日本市場で徐々に存在感が増す中で、モトローラのグローバル本社にとっての日本の立ち位置も変わりつつある。

日本は「投資をすれば伸びる国」

2022年に発売した製品はその一例だ。海外向けのスマホをそのまま日本に持ってくるのではなく、日本向けにカスタマイズし、非接触ICカード技術のフェリカや「IP68」レベルの防水性能を搭載した。

「売り上げが伸びてきたこともあり、日本は投資をすれば伸びる国だと理解されるようになった。今では開発の上流から日本の意見を聞かれるようになっており、今後はグローバル製品に日本市場の要望が搭載されるようになる」(松原社長)

モトローラ・モビリティ・ジャパン松原社長
モトローラ・モビリティ・ジャパンの松原社長は、「通信キャリアの戦略を理解して、必要とされる製品をタイムリーに出していく」と語る。消費者からの支持獲得と通信キャリアとの関係構築の両面に注力する構えだ(記者撮影)

モトローラの日本におけるスマホ事業は、売り上げでの成長を重視する段階。大きな利益は生んでいないと見られるが、赤字ではない。

その一因として、日本以外の市場で一定シェアを確保していることが挙げられる。

モトローラでは、全世界向けに出した製品を、大きな費用をかけずに地域に合わせてカスタマイズしている。そのため日本の現地法人でかかる費用が少なく、採算を下支えしている。

世界市場で一定の存在感を得ていることが、モトローラが日本市場でスマホに注力できる理由となっている。裏返しとして日本のスマホメーカーが最近続々と撤退している理由ともいえそうだ。

モトローラをめぐっては見逃せない動きがもう1つある。日本でシェア3位のFCNTの動向だ。

信用調査会社の東京商工リサーチによると、FCNTの一部事業がモトローラを傘下に持つレノボに譲渡される予定。FCNTとその関連会社2社は今年5月、保証債務を含めて計1700億円超もの負債を抱えて破綻した。8月22日付で、携帯端末の開発・販売・修理など主要事業の譲渡契約をレノボと締結したという。

今後、arrowsやらくらくスマートフォンはどうなるのか。モトローラと、どのように製品をすみ分けるのか。グーグルに次いでアップル一強に挑む新たな勢力になるかもしれない。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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