鉄道員一直線とは限らない「鉄道高校」何を学ぶ? 時代に応じて以前はなかった手話や中国語も
以前と比べてさまざまな変化があるとはいえ、やはり鉄道高校ならではといえるのは鉄道関係の実習だろう。昭和鉄道高校には、鉄道事業者や関連会社から提供されたさまざまな実習機械が存在する。
元運転士の大渕利一先生の案内で実習室に入ると、まず目に飛び込んでくるのが信号機、菱形パンタグラフ、架線。さらに信号てこを使って列車の進路を制御する進路制御卓、列車の加減速を制御する機械、国鉄101系電車の運転台とドアがあり、壁面には鉄道にまつわる標識等の掲示物がズラリと並ぶ。使われている教科書は学校が自前で作成したものが多い。鉄道総合技術研究所(鉄道総研)制作のテキストもあるが、これは制作に大渕先生が携わっている。
進路制御卓はかつて大手私鉄の駅で使われていた実物で、実際に電源が入る。列車が来ることを知らせるブザーが鳴ると、列車の動きに合わせて線路を示すランプが光り、進路上のボタンを押してポイントを切り換えたり、信号を進行表示にしたりといった操作を行って列車の進路を制御するといった実習を行う。
運転シミュレーターで何を学ぶ?
電車の運転シミュレーターもある。最近リニューアルを実施し、国鉄455系電車の運転台と私鉄のワンハンドル式の運転台、またホームと電車が接するいわゆるL空間に車掌実習用のモニターが備えられ、旅客の乗降を再現している。
早速実習が始まる。「シミュレーター使えて楽しいと思うけど、ニコニコはしても鉄ヲタみたいにニタニタはしないように!」という号令で生徒から笑いが生まれ、緊張感がほぐれたが、一方で仕事として鉄道にかかわるという意識を持って実習に取り組むという意識付けでもある。
シミュレーターというと運転操作の技術を学ぶものと思いがちだが、「シミュレーターを使った実習では運転技能を究めるといったことはしません」と、元運転士の樋口昌明先生はいう。
「鉄道運転士は景色を見ただけで距離がわからないといけないし、速度計を隠した状態で速度を当てる速度観測というものができなければなりません。映像ではそんなものは身に付かない。実際に身体で覚えるものだから。だからシミュレーターで運転技能を究めようとしても意味がありません。なので、この実習では運転しながらどこにどんな標識が、どんな意味で、何のために設置されているか考えていきましょう」と樋口先生は生徒に語る。
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