鉄道員一直線とは限らない「鉄道高校」何を学ぶ? 時代に応じて以前はなかった手話や中国語も
筆者も運転してみたが、やはり映像だと距離感覚や速度感を掴むのは難しい。運転区間は神奈川県の某私鉄の区間なのだが、運転の様子をよく見たことがある区間でも停止位置に停めるのは困難であった。
車掌の実習では樋口先生による指差喚呼と確認箇所の指導を受け、ドアの開け閉めと閉扉後の確認を行う。ここで先生、「みんなドア閉めボタン押した後、その手をどこに添える?」と生徒に問う。するとだいたいの生徒はそのまま閉めボタンに置いたままと回答するが、先生は「残念ながら駆け込み乗車をされるお客様もいらっしゃるので、いつでも開けられるように閉めるボタンを押したらすぐ開けるボタンに手を添えます。こうやっていつも、次、何が起こるかを考えながら動くのが鉄道員です」。
これは危険予知にもつながる教えである。筆者も在学時にこの話があったからか、エレベーターに乗っている時に「閉」ボタンを押した後、「開」ボタンに手を添えるようになっているのだ。「安全教育には特に力を入れています」と先生。なぜこの手順が必要なのかを考えさせ、身に付ける。これが真価と言える部分であろう。
鉄道の現場でも語学は重要
取材に訪れた土曜日は選択授業の日だった。「生徒がただ授業を受けるだけでは受け身の姿勢になってしまいますから、生徒自身が将来働く場所で必要になりそうだと思う科目を自主的に、自由に選んで受講できるようになっています」と教頭の松井浩先生はいう。
選択科目を見ると、観光英語、中国語、手話といった、筆者が在学中にはなかった科目が並び、インバウンド旅客やバリアフリー対応を意識しているのが見て取れる。とくに英語は通常の授業に加え、実践的な英語を学ぶ科目では駅や車内での案内への活用を意識しているといい、鉄道の現場でも英語が不可欠になっている時代を感じさせる。
担当の先生によると、「英語の教材は今でも卒業生が現場に持ち込んで活用し、本当に助かっていてありがたいとの声をもらえています」とのことで、実用性は高いようだ。手話では山手線全駅の駅名を表現する実習もあり、「高輪ゲートウェイ駅」を表現してもらうと、まさにあの駅だというイメージが湧く感じであった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら