ジャニーズ、スポンサー離れは"終わりの始まり"か ジャニーズ事務所が取り組むべき2つの「緊急課題」

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影響はそれに留まらない。いずれ、テレビ番組でのジャニーズタレントの起用も控えられるようになるだろう。現状においては、テレビ局の大半はジャニーズタレントの起用に関して、実質「現状維持」を表明している状況だ。民放テレビ局においては、収入のおおむね80%が広告収入である。スポンサー企業が「ジャニーズタレントを使っている番組には広告を出さない」という判断をしていくと、テレビ局だけが現状維持で使用を継続するというわけにはいかなくなる。

ジャニーズ事務所は、広告収入を失い、テレビの出演料も失うという「ダブルパンチ」を食らうことになるのだ。

ジャニーズ事務所のビジネス活動において、最速で取り組まなければならないのが、このスポンサー離れだ。新体制となったジャニーズ事務所が、今後どれだけ性加害問題に向き合い、改革を加速できるか、スピード感も今後重要な焦点となってくる。

最後に、スポンサー離れ以外のもうひとつの緊急課題について述べておきたい。

性加害について「うわさ」でしか知らなかったという経営陣(撮影:風間仁一郎)

会見に出席した藤島ジュリー前社長、東山新社長、井ノ原氏は、全員ジャニー喜多川氏の性加害について、異口同音に「うわさでは聞いていたが、見たことはないし、ジュニアから直接話を聞いたこともない」といった発言をしている。会見後、数名の所属タレントが同様の発言をしている。この点に関しては、事務所側と被害者側の主張に大きな齟齬が見られる。

東山社長については、かつて所属タレントに対して性加害を行ったという疑惑も浮上している。元タレントによる書籍などでそのことが描かれている。東山社長はそれを記憶にないなどとして否定しているが、この点についても、被害者の主張と食い違いが生じている。

事務所側と被害者側で重要な事実関係について「あった」「なかった」という争いが生じてしまうと、補償と救済に関して同じテーブルにつくことさえ難しくなってしまう。そうなってしまうと、スポンサー離れがさらに加速することになりかねない。

再発防止特別チームが提案する「解体的出直し」を実現するうえで、多くの課題が山積しているのだ。

1.スポンサー離れの阻止

2.被害者との合意形成

特にこれらの2点は、ジャニーズ事務所が緊急で取り組まなければならない課題である。それができなければ、ジャニーズ事務所の「出直し」は難しくなり、「解体」の道をたどることになるだろう。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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