PBRは1倍割れ、株主圧力高まる「テレビ局」の活路 放送以外の収益拡大へM&Aなどを模索するが…
資本効率の問題はTBSに限った話ではない。主要な民間テレビ局のPBRは軒並み低水準で、最も高いテレビ東京ホールディングスでも、東証が問題視する「1倍割れ」の状況だ。
テレビ広告費が減少傾向にある中、どのテレビ局も主力事業の低迷が続く。中でもフジ・メディア・ホールディングスは2024年3月期第1四半期決算で、中核子会社のフジテレビが赤字に転落し、本業ではない不動産事業の利益でカバーする構造となっている。
収益力の低下に加えて、大量の政策保有株を抱えることや、放送設備をはじめとした不動産資産が大きいといったテレビ局固有の事情も、資本効率の低さの背景にある。また、外資規制による外国人投資家の株式保有制限も、株価が割安になりやすい要因と見られている。
こうした状況下で、テレビ局に対する株主の圧力は高まるいっぽうだ。
アメリカの投資ファンドのRMBキャピタルは、2020年にテレビ朝日ホールディングスに対して株主提案を行い、自己株買いの実施を要請。2022年には香港の投資会社、リム・アドバイザーズがテレビ東京ホールディングスに対する株主提案で、政策保有株売却による資本効率の改善を求めた。
会社を買ったはいいが…
「ほとんどの局が放送外収入拡大のためのM&Aを模索しているが、大きな一手を打てていない」。あるテレビ局の幹部はそう吐露する。キー局の中でかろうじて先行しているのが、日本テレビホールディングスだという。
日本テレビは2014年にフィットネスクラブ「ティップネス」を243億円で買収。2017年にはアンパンマンこどもミュージアムを運営するACMを、2022年にはイベントの特殊内装・造形等を手がけるムラヤマホールディングスを、それぞれ子会社化した。
テレビ視聴率の低下に歯止めがかからない以上、今後は冒頭のTBSも含めて、他局でも同様の動きが加速すると見られる。しかし問題は、放送外領域での積極的なM&Aが本当に企業価値向上に寄与するのか、だ。
例えば日本テレビが買収したティップネスは、コロナ禍の2020年度に65億円の営業赤字に転落し、収益性低下に伴い多大な減損損失を計上。2022年度も営業赤字から脱していない。その他の買収会社も含め、現状はM&Aの成果が収益に結び付いているとは言いがたい。
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