自然資本や生物多様性に関するリスクや機会の情報開示を求めるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークの最終提言が、2023年9月に公開される予定だ。気候変動リスクが事業に及ぼす影響を評価・開示するTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に続き、企業がどこまで取り組みを進めていくのか、今後の動向が気になる分野である。
今回は、『CSR企業総覧(ESG編)』2023年版掲載データを基に、生物多様性保全活動への支出額が多い上位100社のランキングを紹介する。
対象は同誌掲載企業1702社のうち、2021年度の同支出額を回答している524社。生物多様性保全に関する活動に含まれる範囲は、各社によって異なる。なお、『CSR企業白書』2023年版には、同ランキング上位300社を掲載している。
トップは信越化学工業
1位は信越化学工業(生物多様性保全支出額は16,062百万円、以下同)。化学物質の環境への排出量削減などに取り組むほか、パルプサプライヤーに森林認証の取得を要請するなど、サプライチェーン全体で環境保全を推進する。
2位は王子ホールディングス(11,150百万円)。国内社有林19万ヘクタールの森林保全を推進。さらに生物多様性を含む環境保全林として1.1万ヘクタールを指定し、管理している。
3位は富士フイルムホールディングス(8,860百万円)。社内の環境配慮設計規則において、生物多様性保全に資する項目を開発・設計段階から組み込み、全製品に適用している。
4位は東レ(5,985百万円)。同社東海工場では、近隣企業や専門家、学生、NPOと協働した生物多様性保全活動に取り組むプロジェクトに参画。敷地内にビオトープを造成するなど積極的に活動する。
5位は第一生命ホールディングス(3,957百万円)だ。同社は生物多様性の保全に資する案件への投融資をとおした、社会へのポジティブインパクトの創出に取り組む。
以下、6位NTTドコモ、7位オムロン、8位資生堂、9位日本製紙、10位日本電信電話(NTT)と続く。
企業が生物多様性について検討を進めるには、まず自社のビジネスのどこに自然資本や生物多様性に関する接点があるのかを把握しなくてはならない。今回のランキングに掲載されている企業は、自社のビジネスと自然資本や生物多様性をひも付け、それを定量的に把握することができている企業といえるだろう。
自然資本や生物多様性は、気候変動に続き、企業が頭を悩ませる新たな課題の1つだ。今後、各社の取り組みが拡大していくのか、内容も合わせて今後の動向を調査していきたい。
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