1人1時間当たりの業界平均レートは3300円なのに、当社の平均は4900円と5割高い--西本甲介・メイテック社長(第4回)

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1人1時間当たりの業界平均レートは3300円なのに、当社の平均は4900円と5割高い--西本甲介・メイテック社長(第4回)

--混迷のときこそトップはビジョンを示すべきだとおっしゃいましたが、西本さんが示すビジョンについてお話しいただけますか。

われわれの場合、創業以来「プロのエンジニア集団」を掲げてきましたが、今あらためて「プロフェッショナル」という考え方を社員と共有しようと考えています。

今から40~50年後、今ある企業がいったいどれだけ存続しているでしょうか。もちろんわれわれは生き残りたいと思っていますが、おそらくほとんどの会社はなくなるでしょう。もはや終身雇用など成立しないということは、若い世代ほど本能的にわかっているような気がします。

今後は企業の枠を超えて働き続けられる「プロフェッショナル」という働き方が1つの選択肢として確立されていくと思います。「お父さんは新しい働き方をしているんだ」と社員が子どもたちに言えるような会社になっていきたいですね。

実際、プロフェッショナルな人材は強いです。大企業をリストラされ、「あなたは何ができますか」と聞かれて「部長ができます」と答えるような人がいましたが、そういう人は次の仕事が決まりません(笑)。

一方、マネジメント側にシフトしないと昇格昇級ができないのに、とにかく技術の仕事が好きで40歳を過ぎてもエンジニアにこだわり続けていたような人は次も何とかなるんです。社長になっていちばんうれしいことなのですが、当社では数年前から60歳の定年を迎える人も数名ずつ出てきました。彼らは、派遣という形だからこそ企業の枠を超えてプロのエンジニアとしての生き方を全うできたんだと思うんです。

メイテックというプラットフォームの中で雇用を守りつつ、プロとしてのライフキャリアやキャリアパスというものを社員といかに共有できるかが課題。それが1つの企業価値として社会に受け入れられればよりいい人材が集まりますし、お客様に対してもいい戦力の提供ができるようになるのではないでしょうか。

--社員6000名のうち、現在何人くらいがプロのエンジニアと言えるのでしょうか。

日本の技術者派遣業界において、1人1時間当たりの平均レートは3300円くらいなのですが、当社のエンジニアの平均は4900円、一番高い人で7000円台です。

業界平均より50%以上も高いチャージは、それだけ開発現場のハイエンドな部分を中心に事業をさせていただけているという証しでもあります。派遣エンジニアで年収1000万円を超える会社はうちくらいではないでしょうか。最高は40代で1200万~1300万円ですし、長いエンジニアは10~20年と契約が更新されていきます。といっても、お客様からプロだと言っていただけるエンジニアは、かなり甘く見て2割。シビアに見て1割ですね。もっとこの割合を大きくしていかなければなりません。

私は社長になって以来、「市場価値」という考え方を社員と共有してきました。市場価値は、お客様にどれだけ長くわれわれのサービスに高いペイを払い続けていただけるかにかかっています。ペイといっても結果であって目指すところではありません。プロのエンジニアとしてどうありたいのかをまず会社と社員がお互い握り合いたいと考えているんです。いわば当社の事業は6000通りの商品を扱っているビジネスであり、1つとして同じ商品はありません。

しかも、扱っているのはモノではなくヒト。6000人の一人ひとりが望むベストなキャリアをどう形成するかが前提にあり、その結果としてペイやリターンがあるという市場価値を大切にしています。

--高いスペックの人材が派遣先の会社に引き抜かれたりはしないのでしょうか。

お客様もB to Bの関係性を大切にしてくださっていますので、ほとんど引き抜きはありません。主な取引先は大手メーカーで、いったんお取引をすると10年、20年、長いと30年以上お付き合いが続く場合が多いんです。もしも優秀な人を引き抜かれたらこちらも安心していい人材を送り込めなくなりますし、お客様側も人件費という大きなコストの変動費化や、緊急時の即戦力をすぐに調達できるというメリットが失われてしまいますから。

職業選択は個人の自由ですので、引き抜きの話があったときは社員の判断に任せますが、優秀なエンジニアほどメイテックというプラットフォームの中で成長したいと言ってくれます。当社の退職率は6%と一般企業並み。この業界ではすごく低い数字です。たいてい転職しても会議が増えるなどどんどん技術から離れていき、またメイテックに戻りたいという人が多いんです。そこで、6年前からはカムバック制度を作り、辞めても戻りたい人は迎え入れるようにしました。

(撮影:梅谷 秀司)

にしもと・こうすけ
1958年愛知県生まれ。1984年メイテックに入社し、社長室長、人事部を経て1995年に取締役に就任し人事部長と経理部長を兼任する。1996年専務取締役人事部長・経理部長、99年から現職。2006年からはグループCEOも兼務。社団法人日本経済団体連合会理事、一般社団法人日本エンジニアリングアウトソーシング協会代表理事。

■CEOへの道は、エグゼクティブ向けの人材会社・経営者JP主催のセミナー「トークライブ・経営者の条件」との連動企画です
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