住宅ローン「残価設定型」がじわり広がる理由 銀行やハウスメーカーのビジネスも変わる?

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残価設定型住宅ローンによって営業体制が変わりうるのは銀行だけではない。「住宅を販売した後も、ハウスメーカーと顧客との関係が続く」と機構の大垣氏は指摘する。

前述の通り、残価設定型住宅ローンを利用するには定期的に点検を受ける必要がある。ハウスメーカーからすれば定期点検を通じて顧客との接点を維持でき、修繕やリフォーム、住み替えの営業機会を得られる。

残価設定月到来後に顧客が自宅の売却を選択した場合、ハウスメーカーがそれを買い取って再販することも可能だ。100年の耐用年数を持つ長期優良住宅を20~30年ごとに買い取って再販すれば、戸建て1件あたりで何度も収益を上げられる。

中堅ハウスメーカーへ裾野を広げる

2022年10月から始まった残価設定型住宅ローン。現状は大手ハウスメーカーの戸建てに限られ利用実績も多くないが、機構は今後中堅ハウスメーカーにも提携を広げて、住宅業界での普及を後押ししたい構えだ。

野村総合研究所の推計によれば、2022年度に86万戸だった国内の新設住宅着工戸数は、2030年度に74万戸、2049年度には55万戸にまで減少する見通しだ。新築市場の縮小と対照的に、中古住宅の流通強化はますます重要になっていく。

残価設定型住宅ローンの登場は、消費者にとっては定年後のライフスタイルに応じた住み方の転換を、銀行やハウスメーカーにとってはビジネスモデルの変革をもたらす可能性を秘めている。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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