新幹線「異常事態」を未然に防ぐ12人のプロ集団 台車トラブルを教訓にJR西日本が2018年に設置
「2人1組で添乗しているため、運行を継続できないほどの事象であれば、2人の見解はすぐに一致するくらい明確です。むしろ、“ちょっと嫌な感じだよね”という段階でもペアの意見は一致する」と藤井・田島氏が話す。過去には乗客から「焦げ臭い」と申告があり、即応対応したところ、車内喫煙ルームから漏れ出た煙草の臭いだったということもあり、運行継続を判断するうえでは、経験と知識が欠かせない。
岡山・広島の両走行管理班をまとめる後藤直之総括係長は「少しでも不安要素があるなら、躊躇せず列車を止める判断をするように指導を徹底しています。列車を“止める”という判断はお客さまに多大なご迷惑をおかけすることもあり、勇気がいる判断。しかし、事象の最前線に立つ私たちが列車を停止させなければ、それが重大な事故に結びつく可能性がある。“止める”という判断をした検査員のことを否定することは決してない」と説明する。
重大トラブルを未然に防ぐ
さらに、運転検査のほか、車上データを精査することで故障につながる予兆管理を行い、重大なインシデントを未然に防いだこともある。最近の事象では、2023年2月16日に東海道新幹線小田原―新横浜間を走行する、「のぞみ22号」の運転台モニターに異常を知らせる通知が表示され、運行を取りやめた事象が起きた。車体を支える「空気ばね」と呼ばれる部品の圧力バランスにズレが生じたのが理由だが、先の「のぞみ34号重大インシデント」発生時に同様の事象が発生することが判明したため、該当箇所に検知装置を取り付けており、今回は、ダイヤは大きく乱れたものの事故につながる前に停止させることができた事例とも言える。なお、このケースでは台車部に亀裂は発生していない。
「私たちが走行可能と判断した編成は、お客さまはもちろん、乗務員にも安心して乗ってもらえる、そんなプロフェッショナルでありたい」と走行管理班員たちが声を揃える。安全安定輸送の維持は、こうした地道な人の力にも支えられている。
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