新幹線「異常事態」を未然に防ぐ12人のプロ集団 台車トラブルを教訓にJR西日本が2018年に設置

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運転検査には主に定期的に添乗して実施する形式と、乗務員等の申告により臨時に添乗する2パターンがある。申告を受けた際に即座に検修社員が乗車できるよう、山陽新幹線の中間駅に拠点が設置されている。今回はこのうち、広島の走行管理班の定期添乗運転検査に同行した。

広島支所ホーム派出所は日勤体制で主に岡山―小倉間の添乗を担当。一方で、新大阪―広島間を受け持つ岡山支所ホーム派出所は2名の泊まり勤務を含む24時間体制になっており、早朝・夜間は岡山が全体の任務を担う。定期添乗はJR西日本が所有する編成に対して両派出所で毎日1往復行われ、検査を実施する編成の決定には、N700系、N700A、N700Sについては、車両側に設置された車両状態を測定する装置から送られてくる「乗り心地データ」を参照して決定する。500系、700系についても30日に1回のペースで先述の形式を含めた、JR西日本所有の山陽新幹線を走行する全編成に添乗して検査が行われている。

この日の検査を担当するのは、藤井健広、田島紳伍の両氏。それぞれ26歳、24歳と若手の検修社員だが、走行管理班全体を見ても平均年齢は29.25歳と若さが光る。

乗り心地の改善にもつなげる

最初に添乗するのは8両編成のN700系。車内に乗り込むと、すぐに台車の真上位置のデッキ部床面に、縦横前後方向の揺れを測定できる「リアルタイム加速度計」を取り付け、台車上の動揺を測定する。台車の測定は、あらかじめ車両から送られてきたデータを元に対象を1〜2カ所程度に絞って実施する。

「車両を動的な状態で検査することで、停車中の検修では見つからない特定の速度帯での事象や、最高速での状態、トンネル内の気密性などを見ることができる」と藤井氏は話す。測定データはリアルタイムで確認できるほか、帰所後に解析する。また、揺れは車両の異常はもとより、シンプルに乗り心地にも関わる。新幹線の車輪は真円状態が理想だが、制動や加速時に空転・滑走を起こすと「フラット」と呼ばれる平坦部や、偏摩耗が発生する。これらが発生していると、走行中にガタガタという音と、微細な揺れが生じる。こうした事象は車体側の「乗り心地データ」でも検出され、走行管理班が添乗したのち、車両基地で車輪の研削を行い、乗り心地の改善につなげている。

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