沖縄「ブルーシールアイス」原料を変えた深いワケ 「沖縄人気を背景に右肩上がりで伸びてきた」
まずコロナで同様に打撃を被っている生産者の支援が挙げられる。観光産業の低迷により、とくに離島では第一次産業の大部分を占めているさとうきびの大量余剰が起こった。そこでブルーシールアイスの原材料を上白糖や液糖から一部きび糖へ切り換えたという。
コロナ禍ではこうした事態は各地での課題となったが、過疎地である離島を多く抱える沖縄ではさらに深刻な事情が絡む。一次産業が成り立たなくなれば無人化へと進む。最終的には隣国との領土問題にもかかわってくるのだという。
考えすぎと捉える人もいるかもしれないが、沖縄のみならず「島」のある自治体では身近に迫る問題だ。沖縄の企業である同社にとっても会社運営と切り離して考えることはできないわけだ。
また、2021年4月には流通商品である「ブルーシールカップ」をリニューアル。価格を据え置きで20%増量した。さらにフタの改良により年間6トンの紙資源減量、初回生産パッケージでは1商品につき1円を「首里城基金」に寄付するなどのSDGsの取り組みも合わせて行った。これらにより、初月の売り上げは従来の3倍に上ったという。
県外に対するブランド力強化
そして対策の2つめが、「県外に対するブランド力強化」だ。冒頭にも述べたように、出店を加速しているのもそうした意図が大きい。
「まだまだ、沖縄以外での認知度が低いと感じている。また沖縄の観光客はリピート率が高く、86%。コロナで沖縄に来たいのに来れない人が多くいらっしゃるということだ。出店を増やしたのはそうした人にブルーシールを食べてもらいたいという思いもあった」(山本氏)
実のところ、コロナ禍以前からFCオーナーの申し出は多く受けていたが、これまで積極的には出店していなかった。このたび出店を増やすという方針に切り換えてからも、商品の生産能力やサプライチェーン、人材育成などといった体制をしっかり作りながら、慎重に展開していくという。
「当社の方針は『店舗に来てお客様に笑顔になっていただく』こと。出店しすぎてコントロールできなくなるようでは本末転倒」(山本氏)
具体的には、生産体制としては現在、沖縄の本社工場のほかに福島、埼玉、静岡に生産拠点があり、沖縄から一部原材料を輸送している。今以上に出店を増やす場合は、生産拠点を増やすとともに、FC店を束ねるスーパーバイザーという人材の育成も同時に行う必要があるという。
アイスクリームのチェーンといえば大手のB-R サーティワンアイスクリーム、ハーゲンダッツが挙げられる。いずれも海外発のブランドだ。前者はブルーシールのようにショップが中心のブランドだが、コロナ後はテイクアウト商品を充実させ、2022年の年間売上高は過去最高の約220億円になっている。また後者はスーパーやコンビニなどでのカップアイスの小売りがメインで、2022年は巣ごもり需要を受けて約505億円を売り上げている。
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