地球温暖化で「自殺と殺人が増加している」背景 気候変動はダイレクトに人間を破壊する
「心拍数の上昇は不安感を増幅させる場合がある。暑さで身体の状況が大きく変化し、それによって感情・精神的な状況も大きく変化することになる」とシャー医師は言う。
気分や不安、うつ症状と関連のある神経伝達物質「セロトニン」は、体温を感知する身体機能を調節する役割を持つ。そのため、日光の量が増えたり気温が上がって暑くなったりすると、セロトニンの値が上昇し、気分の浮き沈みが激しくなったり、攻撃性やイライラの感情が増幅したりする可能性がある。抗生物質、β(ベータ)遮断薬、一部の抗うつ薬や抗ヒスタミン剤など、一般的に使用されている医薬品も、体温を感知し調節する身体機能に影響を与える。
統合失調症、うつ病、双極性障害に処方される薬(広く使用されているリチウムなど)は、身体の発汗機能や体温を下げる機能を低減させる。極度の暑さと発汗によって体内のリチウム濃度が有毒なレベルにまで濃縮され、深刻な身体的・精神的問題を引き起こし、死に至る場合すらある、とシャー医師は指摘する。
危険なレベルの脱水症状を引き起こす可能性も
「こうした薬、つまり日光や暑さと影響し合う薬を服用する患者に対して注意喚起する必要がある」とシャー医師は言う。「精神科医自身も今以上に留意する必要がある」。
このほかにも、喉の渇きが抑制されることで、危険なレベルの脱水症状を引き起こす可能性のある薬もある。利尿作用を強めるアルコールやカフェイン、一部の薬も、脱水症状や精神疾患、精神錯乱につながることがある。
暑さは気候変動の1つの側面でしかなく、暑さがメンタルヘルスに与える直接的な影響を、人類滅亡の脅威という大きな不安感から切り離して考えるのは簡単ではない。