地球温暖化で「自殺と殺人が増加している」背景 気候変動はダイレクトに人間を破壊する

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暑さはイライラや怒りといった感情を増幅させるだけでなく、不安や統合失調症、うつ病などの精神疾患を悪化させることもあるようだ。高齢者や思春期の若者、すでに精神疾患を患っている人、住居を持たない人や社会・経済的な地位が低い人はとりわけ危険な状況にある。

救急外来受診が示す明白な変化

昨年実施された画期的な研究は、民間保険の加入者200万人以上のデータを分析。夏の最も気温が高い5〜6日間では、同じ夏でも気温が比較的低いときに比べ、精神疾患による救急外来受診数が著しく多くなっていたことが判明した。

研究を主導したボストン大学公衆衛生大学院の環境疫学者アムルタ・ノリ=サルマ氏は、アメリカの北部で増加度合いが大きかったのは、南西部のような地域に比べ熱波への備えができていなかったためだろう、と話した。

こうした地域差は、気分障害、不安障害、ストレス障害、統合失調症、薬物使用障害、自傷行為といったさまざまなメンタルヘルス状態にはっきりと現れていた。「猛暑は外部からのストレス要因であり、人々のメンタルヘルス症状を悪化させていると思われる」とノリ=サルマ氏は言う。

気温の上昇と精神疾患の関連性について科学者たちが提起している生物学的な説明にはさまざまなものがあるが、こうした精神疾患の少なくとも一部は単純な事象に起因している可能性がある。睡眠の乱れだ。

気温の高い夜はなかなか寝付けず、暑さのせいでいつもより早く目が覚めてしまう。つまり、睡眠の質が悪化するのだ。

暑い部屋で眠る日が数日から数週間続くと、糖尿病や心臓病といった慢性疾患が悪化するだけでなく、精神疾患や自殺のリスクが高まり、記憶、気分、認知機能にも悪影響を与える可能性がある。

精神疾患の中には、身体的な問題の延長として発生していると考えられるものもある。つい先日の午後、ベイラー医科大学(ヒューストン)の精神科医アシム・シャー医師は、精神疾患を抱える患者のほぼ全員で脈拍や心拍数が3カ月前よりも上昇していることに気がついた。

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