優れた詩も同じだ。
「詩は静寂から現れ出て、人を元の静寂へと導きます」と、ストーリーテリングをする詩人のマリリン・ネルソンはクリスタ・ティペットによるインタビューで語った。
「静寂は、人が人生を生き抜くのに必要なもののじつに多くの源泉です」。彼女はさらに続ける。「詩は、何かが水から浮かび上がるように出現する単語や句や文からできています。それらは私たちの前に現れ、私たちの中にあるものを呼び出します」
ピューリッツァー賞を受賞した詩人で、アメリカの桂冠詩人に2期任命されたトレイシー・K・スミスはあるインタビューで、「詩は言葉に表せない感情のすぐそばにある言語です」と語った。
詩は、不可能に挑む。誕生、死、霊的な目覚め、恋に落ちたときなど、人が人生で最も言いようもなく胸を打たれる瞬間に頼るのが詩であることに、彼女は思いを巡らせる。
リズムや語数に関係なく、あらゆる詩は、その構造の中に静寂が組み込まれている。静寂は、ページの上、節や連の中、単語と単語の間にある。
優れた詩は、文字にされていることとされていないことの間に、創造的な緊張を保っている。滑らかな石が水を切るように、時間の上を跳ね進んでいく。この1人の読者に、この1つの日に、この1つの瞬間に現れるもののために、空白を残す。
毎朝、1つの詩か本の1節を読む
もしあなたが、これまで一度も詩に「感動した」ことがないように感じているのなら、感動したことのある友人や近しい人に、気に入っている詩は何か、それのどこが好きかを訊いてほしい。
彼らの気に入っている詩を読んだり、彼らに朗読してもらったりし、静寂に耳を澄ませる。言葉と空間の間の境界を聞く。「銀」と「金」のバランスだ。
詩人のデイヴィッド・ホワイトは、「詩は、それによって人が現に静寂を生み出すことができる言語的芸術形態だ」と書いている。
作家で識者のスーザン・ソンタグは、最高の形態の芸術、散文、あるいは韻文は、「後に静寂を残す」と述べている。
毎朝、1つの詩か本の1節を読むという単純な習慣によって、その日1日のトーンを決めることができる。寝る前にひと読みすれば、夢の世界の種蒔きができる。
たとえ最も高尚な文学作品を読んでいなかったとしても、読書そのものを純粋な注意を払う修練にしようとするべきだ――「後に静寂を残す」努力をするのだ。
(翻訳:柴田裕之)
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