日大林理事長と岸田首相「マイナス会見」の共通項 2つに見られる要因「危機意識」の弱さが露呈

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日本大学本部で林真理子理事長、酒井健夫学長、それに元検事で競技スポーツ担当の澤田康広副学長が顔を揃えた記者会見は、2時間15分あまりに及んだ。著名な理事長が会見するとあって、テレビや新聞、ラジオ、フリーランスなどの記者が大挙して押し寄せ、筆者が数えただけでも、実に170近い質問が飛んだ。

日大側はこれに応じたが、本来であれば、記者会見で問題の火消しを図らなければならないところを、逆に炎上させる結果を招いてしまった。では、どこが良くなかったのか、そして、どうすれば良かったのか整理しておこう。

日大会見問題点のまとめ

(1)トップが組織全体を掌握できていない

林理事長自らが質問に答えたのは、わずか27回。澤田副学長に説明を任せたり、澤田副学長が林理事長の言葉をさえぎり答弁したりする場面も多かった。

記者会見の後半で「スポーツ部には遠慮があった」と漏らした点は、理事長就任1年あまりでは、まだまだ現場の状況把握に踏み込めていない現状をうかがわせる形となってしまった。

(2)巨大組織として平時から備えができていない

2018年5月にあった悪質なタックル事件もそうだったが、「教職員と学生を合わせ8万人もいれば何か問題が起きるかもしれない」というリスクの洗い出しが不十分で、有事=問題が生じた際の初動も遅い。

今回に関しては、2022年11月下旬、アメフト部員が「大麻のようなものを吸った」と申告してきたのであれば、なぜその時点から徹底調査をしなかったのかという疑念が残る。ただ、記者会見では、「警察に相談したが、事実かどうか確認できないと言われた」などと、当事者意識を欠くコメントに終始した。

(3)会見に臨む首脳陣のメディアトレーニングができていない

「隠蔽では?」との質問に、林理事長が「隠蔽という言葉をお使いになるのは非常に遺憾」と語気を強めて反論したり、澤田副学長が、ブツ(押収物)、パケ(覚醒剤などを小分けにした袋)など、検察や警察当局が使う専門用語を用いて釈明したり、記者からの追及に居丈高に答える場面が見られた。

これは、記者の向こうに視聴者や読者がいることを忘れた行為で、メディアトレーニングができていない。記者から厳しく追及されたとしても、視聴者や読者の存在に留意して受け答えをすること、そして、話した内容の「どこを切り取られて報道されるか」が世論を左右するため、冷静に対応することが重要である。

日大の記者会見で想起されるのは、2018年5月23日に開かれたアメフト部の悪質タックル事件の会見を受けてのものだ。当時、司会を務めた広報担当の男性が、「もう会見を打ち切ります。これ以上やってもキリがないです」と、強引に記者からの質問を打ち切ったことは、日大の体質を物語るものとして批判を浴びることとなった。

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