世界的権威が警告する「中国の影響力工作」の脅威 尖閣や歴史問題で誘発されている「社会的不和」
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は世界を震撼させ、平和ボケと揶揄されていた日本でも、安全保障問題への関心が急速に高まりました。
北朝鮮が頻繁に日本近海でミサイル発射実験を繰り返し、否でも応でも、多くの人が武力による脅威を意識するようになっているのではないでしょうか。
また、昨年末、日本政府による安全保障三文書にて近隣国の脅威が明確に示され、防衛費増大の議論も進み、我が国でもにわかに他国からの武力による脅威に備える機運が高まってきています。
戦いはキネティック戦からノンキネティック戦へ
しかしながら、昨今の国家安全保障における脅威は、ミサイルなど破壊兵器によるものだけでなく、サイバー攻撃や経済制裁など、キネティック戦からノンキネティック戦へ軸足を移しているとされています。
たとえば、ロシアのゲラシモフ参謀総長による「将来の軍事紛争においては、非軍事的手段と軍事的手段の比率は4対1で圧倒的に非軍事的手段の比率が高い」という言葉は有名です。アメリカの圧倒的な軍事力の前に、アメリカに敵対する国々は「戦いの性質」を変えてきているということです。
非軍事的手段として、最も有名なものの一つが影響力工作です。影響力工作とは、概ね、「国家間での競争(戦い)における情報戦の一種で、競争相手国の意思決定に影響を与え、行動の変容を促すこと」をいいます。
たとえば、2016年にあったアメリカの大統領選挙へのロシアによる介入の疑惑が有名です。これは、2016年の大統領選挙において泡沫候補であった共和党ドナルド・トランプがロシアによるサポートによりいっきに追い上げ、最有力候補の民主党ヒラリー・クリントンを破って、第45代アメリカ大統領になったとされる疑惑です。
影響力工作は、平時有事を問わないあらゆる段階での情報戦の一種として位置付けられています。私が2018年に参加した欧米でのサイバー安全保障の会議にて、軍服を着たアメリカの高級将校たちが、「ロシアによる選挙の介入は民主主義国家への大きな脅威であり、我々(アメリカのサイバー軍)はこれを拒否しなければならない」と高らかに宣言していたのは印象的でした。
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