日経平均再浮上の「重要サイン」が点灯しつつある 3万4000円突破に必要な「3つの条件」とは何か

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まず、何と言っても株価指数は大企業で構成されるので、中小企業よりも為替変動に対する耐性が強く、悪影響が限定的なのは当然だろう。そしてより重要なのは株価指数に占める製造業の比重だ。GDPにおける製造業の直接的な貢献が約2割であるの対して、日経平均株価の採用銘柄数とTOPIX(東証株価指数)の時価総額の約6割は製造業で構成されている。つまりこの2つの株価指数とは「ほぼ大企業製造業の集合体」であると言える。

円安は円建ての輸出金額をカサ上げするほか、海外子会社株式など海外資産の円換算価値が膨らませるなど、複数の経路を通じて大企業製造業の業績を押し上げる。つまり、今回の日銀の政策修正は将来的な円高リスクを減じたという点で日本株の追い風になったと考えられる。

アメリカは「2つの課題」を同時に達成できるか?

次はアメリカ経済だ。FED(連銀)は景気後退を回避しつつ、インフレ沈静化に成功しそうだ。改めてこれまでの金融政策を振り返ると、2022年3月から2023年5月まで累積5%の利上げを敢行した後、前回の6月FOMC(連邦公開市場委員会)では利上げを休止し、今までの金融引き締め効果を見極める段階に移行したと思われた。

しかしながら、その後発表された経済指標は堅調なものが目立った。そのため、インフレ沈静化を最優先課題とするFEDはインフレ再燃の芽を摘むべく、7月に利上げ再開を決定し、FF金利(誘導目標レンジ上限)を5.50%とした。

ではアメリカ経済はこうした金融引き締めには耐えられるのか。その点、ジェローム・パウエル議長は「FRB(連邦準備制度理事会)スタッフはもはや景気後退を予想していない」「失業率の上昇を通じてではなく、求人件数と退職者数の減少を通じて(労働市場の)軟化を確認した」「経済は銀行の混乱をうまく乗り切っているもよう」などと発言し、年初の段階では無理難題とみられていた景気後退を回避しつつ、インフレ沈静化に成功するという「軟着陸」への自信をちらつかせた。

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