地銀系証券が「仕組み債」の販売停止で陥った苦境 最新決算を独自集計、赤字に転落した会社が続出

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地銀系証券会社の決算内容の一覧

赤字額が最も大きかったのは、北海道の北洋銀行傘下の北洋証券だ。「(仕組み債の一種である)EB 債のような問題があったことで、証券子会社の北洋証券については直近決算で赤字の結果となった」。北洋銀行は今年6月に開催された決算説明会でそう説明した。

長野県の八十二銀行も、八十二証券の減益理由を「不安定なマーケット環境から株式等販売が低調に推移したうえ、仕組み債の販売停止による影響」とする。

6月に仕組み債の不適切勧誘をめぐって金融庁から業務改善命令を受けたちばぎん証券は、最終利益ベースでは何とか黒字を確保した。理由は有価証券の売却で特別利益を捻出したため。経常利益ベースでは6億円の赤字だ。

唯一増益を確保したきらぼしライフデザイン証券は、仕組み債を取り扱っていなかった。親会社である東京きらぼしフィナンシャルグループの広報担当者は「販売手数料ではなく、運用残高を重視して長期分散投資を提案した」ことが要因とみる。

問われる地銀が行う証券業務の意義

各社は株式や投資信託の販売や運用報酬の増加を急ぐが、仕組み債を失った影響は大きい。仕組み債は販売会社に入る手数料が多いうえ、早期償還されれば別の商品を提案し、短期間で手数料を繰り返し得られるからだ。ある地銀関係者は「正直に言って、仕組み債を止めてしまうと売るものがない」と嘆息する。

「金融商品の販売は銀行の本業ではない。ほかの分野に力を入れる経営判断もしていただきたい」。金融庁幹部はそう切り捨てる。地方部の顧客であってもネット証券で容易に投資できる今、地銀が証券業務を行う意義は何か。明確な解を見つけられなければ、地銀系証券会社の存在意義に疑問符が付く。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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