全線直通列車なし「系統分離」路線が増える事情 需要減る区間の効率化、乗客は乗り換え必要に

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東武は伊勢崎線(スカイツリーライン)も細かく運行系統を分けており、浅草―伊勢崎間を結ぶ同線を全線直通するのは特急「りょうもう」1往復だけだ。そのほかの列車は都心方面から見ると、まず久喜を境に通勤時間帯以外の運行が分離されている。さらにその先の館林では特急以外の全列車の運行が終日分離されており、館林―伊勢崎間はワンマン3両編成の運転だ。

西武池袋線も、特急以外は飯能駅を境に系統分離されている。飯能―西武秩父間は車両もクロスシートでほかの池袋線車両と全く異なるため、飯能から先が西武秩父線と思っている人もいるかもしれないが、吾野までは池袋線、その先が西武秩父線である。

西武4000系
飯能―西武秩父間を走る西武鉄道の4000系電車。西武池袋線は飯能で運転系統が分かれている(撮影:大澤誠)

最近の例として挙げられるのは小田急電鉄江ノ島線だ。同線は小田原線の相模大野から藤沢を経て片瀬江ノ島までを結ぶ路線だが、2022年3月のダイヤ改正で特急ロマンスカーなど一部を除いて全線を直通する列車がなくなり、藤沢―片瀬江ノ島間は各駅停車の折り返し運転となった。同区間の中間駅はホームが短いため10両編成が停まれず、かつ藤沢駅はスイッチバック構造のため、系統分離には向いていた路線といえるだろう。

小田急 片瀬江ノ島駅
竜宮城スタイルの駅舎で知られる小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅。2022年春のダイヤ改正以降、特急など一部を除き同駅には藤沢折り返しの各停のみ発着するようになった(編集部撮影)

「列車分割」は減る一方?

近年になって系統分離が盛んに行われるようになったのは、車両の運用の効率化や利用実態とのマッチング、また長距離旅客の有料列車への誘導などが理由といえよう。系統分離すれば短編成化やワンマン運転の導入もしやすい。一方で、連結・切り離し作業に手間のかかる列車編成の分割は、以前と比べて減ってきている。編成の分割を行う列車が今後増えることはないのだろうか。

近い将来、中央線快速にグリーン車が導入される。グリーン車は2両で、編成は10両から12両に伸びる。現在、同線の電車は10両固定編成のほかに6両と4両に分割できる編成があり、後者については6両のほうにグリーン車2両を連結し、8+4両の編成になる予定だ。

グリーン車の運転区間は東京―大月間と青梅線の立川―青梅間の予定で、この区間の各駅では12両編成対応工事が行われているが、高尾より先は、大月に近づくにしたがってどんどん乗客が減っていくというのが現状である。時間帯によっては、高尾以遠は12両編成だと輸送力が過剰になりそうだ。8+4両の編成を途中駅で分割し、グリーン車を含む8両が大月へ向かう、という運用もありえるかもしれない。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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