全線直通列車なし「系統分離」路線が増える事情 需要減る区間の効率化、乗客は乗り換え必要に

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東海道本線では、平塚や国府津、熱海で15両編成のうち5両を切り離し・連結する。東北本線(宇都宮線)は小金井、高崎線では籠原で同様の作業を行う。高崎線の場合は籠原より先、ホームが10両編成までしか対応していない駅がある。湘南新宿ラインや上野東京ラインを利用したことがある人なら、籠原がどこにあるかを知らなくても「5両は籠原止まりです」という放送を聞いたことがあるだろう。

E231系 先頭車同士の連結
JR東海道本線や高崎線、宇都宮線では10両編成と5両編成を連結し、途中駅で切り離す運用を行っている(写真:hide0714/PIXTA)

これらの路線は、途中駅で列車を分割した後、長いほうの編成(10両+5両の編成なら10両)がその先へ向かっている。遠方でも比較的利用者が多い路線といえるだろう。乗客の少ない区間の編成車両数を減らしているというよりは、利用者の多い区間で車両を増結しているといえる。

終点まで直通する列車が消えた路線

一方、最近のダイヤ改正ごとに各線で増えているのは系統分離だ。2022年3月のダイヤ改正では、東北本線(宇都宮線)が宇都宮を境に運転系統を分離した。

東京方面からの列車は宇都宮が終点となり、それまで朝夕などに走っていた黒磯までの10両編成直通は廃止。宇都宮―黒磯間はE131系の3・6両編成運転となった。地域の実情に見合った輸送体系ともいえるが、列車によっては混雑がひどくなったともいわれる。同改正では、常磐線も日中時間帯は都心から水戸方面への直通運転をやめて、土浦で5両編成の列車に乗り換えなければならなくなった。

2023年春のダイヤ改正では、青梅線も系統分離された。立川―奥多摩間を結ぶ同線は途中の青梅を境に奥多摩寄りの利用者が少ないため、もともと全線を直通する列車は少なかったが、同ダイヤ改正で青梅―奥多摩間はすべてワンマン運転の4両編成となり、直通列車はなくなった。土休日に走る「ホリデー快速おくたま」も奥多摩直通をやめ、青梅から先は別の列車に接続する形になった。

私鉄でも同様の例は多い。以前から行っているのは、長大な路線網を持つ東武鉄道だ。池袋―寄居間を結ぶ東上線は2005年3月に全線を直通する列車がなくなり、途中の小川町を境に池袋方面と寄居方面の運行が分離された。池袋―小川町間は10両編成が走る一方、小川町―寄居間は全列車が4両編成のワンマン運転である。2023年3月からは4両ワンマンの運転区間が小川町より池袋寄りの森林公園まで広がった。

東武8000 東上線4両ワンマン
東武東上線は池袋―小川町間は10両編成が走るが、同駅で系統分離され寄居までは4両ワンマン電車の運転になる(写真:tarousite/PIXTA)
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