JR大手3社、好調な業績の裏で練る戦略 鉄道だけじゃない、いずれは不動産株に?

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上越妙高(新潟県)―糸魚川間の平均乗車率は46%だった。東海道新幹線・東京―新大阪間の平均乗車率63.5%を引き合いに「首都圏を発着地とする新幹線としては見劣りする」という声も上がる。が、東京―長野間しか利用しない乗客も多く、長野以遠は空席となる。JR西日本は「乗車率40%あれば採算は十分とれる」(真鍋精志社長)としており、その先にある上越妙高―糸魚川間の乗車率46%は大健闘といってよい。

JR東日本にとっては、このほか上野東京ラインが3月に開通したことも大きい。これまで上野駅止まりだった常磐線などが東京駅まで乗り入れ可能になるなど利便性が高まり、20億円の収入増を見込んでいる。

非鉄道事業も堅調だ。名古屋駅直結という地の利を武器に隣県から客を集め、2014年度に松坂屋を抜いて“地域一番店”になった「ジェイアール名古屋タカシマヤ」を抱えるJR東海。JR西日本も、前期に一時閉鎖した大阪駅の商業施設「三越伊勢丹」を4月にリニューアルオープンさせ、開業1カ月の出足は好調だ。首都圏をはじめ、各県の都市にオフィスビルや商業施設、ホテルを多数抱えるJR東日本は言うまでもない。

JR東海はここ数年が業績ピーク

試験走行をするリニア新幹線

2015年度は磐石さをみせる各社だが、その先は各社各様だ。JR東海は、リニア新幹線の南アルプストンネルが今年度中にも着工し、総事業費5兆円の超大型事業がいよいよ本格的にスタートを切る。

だが今後は工事の進捗とともに、これまで順調に返済を進めてきた債務が、再び膨らんでいくことになる。借入利息が増えることで、経常利益のマイナス要因になるだけでなく、開業後も、巨額の減価償却費として、毎年の利益を圧迫する。

また、2027年に開業する品川―名古屋間だけでは、十分な利用客が確保できない見通しで、利益への貢献は大阪へ延伸する2045年を待たなくてはならない。結果、JR東海にとっては今後数年が当面の業績のピークになる可能性が高い。

JR東日本は、新幹線のさらなる高速化、羽田空港と都心を結ぶ羽田アクセス線構想など、鉄道事業で攻めの経営を続けているが、実は今後、同社の成長を担うのは不動産事業だ。品川や渋谷駅再開発といった、都内のビッグプロジェクトでJR東日本は主導的な立場にある。

ここで成功すれば、JR東日本は大手不動産会社に匹敵する東京の大家主として評価され、今後は「不動産株」として注目を集める可能性が高い。まずは2016年春に完成する新宿駅南口再開発がその試金石となる。JR西日本も大阪駅に続き、三ノ宮、広島など他の拠点駅の再開発に着手するなど多角化を行い、連結売上高に占める運輸業以外の比重を高める方針だ。

国内の人口が減り、安定的な鉄道事業の拡大は見込みにくいなか、各社が頭をひねる状況が続きそうだ。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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