実況ツイートが増えた背景には、(3)開催告知の拡散もある。ビッグモーターについても「午前11時から会見」との報道が、開始の2〜3時間前から行われていた。「時間空いてるから、見よっかな」と、配信ページを探した読者もいるだろう。
いまやメディア各社は、自社媒体のみならず、SNSやスマホアプリでも速報できる。わざわざ「ニュース速報」とテロップを打つほどでもない(と判断される)内容だとしても、ネット上であれば比較的ハードル低めに投稿できるのが特徴だ。
大きなリスクを持つ場だからこそ、念入りな準備が必要に
こうした背景もあり、謝罪会見がある種のコンテンツとして、良くも悪くも消費される流れが加速していったのだが、中でも最大の転換点は2014年だったと、筆者は考えている。ゴーストライター疑惑の渦中にあった佐村河内守氏、論文不正を問われて「STAP細胞はあります!」と返した小保方晴子氏、カラ出張を指摘され「号泣」した野々村竜太郎氏(当時兵庫県議)による記者会見が相次いだことで、会見登壇者の一挙手一投足が注目されるようになったのだ。
また、事案によっては、「たとえネット上であっても、1人ひとりが声をあげることが、問題の解決につながる」という思いを人々に抱かせる場合もある。最初は「コンテンツ」的な感覚で乗っかっていたとしても、騒動を知るうちに義憤に駆られ、次第に「当事者」の感覚を得るのだ。謝罪会見を行う企業には、なかなか理解しがたいポイントかもしれない。
だからこそ、会見を開く際には、個々の発言が「どう受け取られるか」を、以前より慎重に考えたうえで、準備を進める必要がある。世論から「一刻も早い会見を」と求められていたビッグモーターだったが、「ゴルフ冒涜」発言が飛び出すような状況では、まだ体制が整っていなかったと言わざるをえない。
とくに現代では、ネット世論は時に、政府すら動かすこともある。「ビジネス存亡の危機」である以上、事前に予行演習をするのは当然として、「想定問答集をしっかり準備したうえで、用意された回答をそらんじられるようにする」くらいの練習は必要だっただろう(もちろん、騒動になるようなことをしなければ、それが一番なのだが)。
筆者は数日前、本サイト(東洋経済オンライン)で「ビッグモーター、『社長のLINE流出』必然だった訳」と題したコラムを執筆した。ここで私は「世論から『公式発表』が渇望されている現状で、もし閉ざされた空間でのみ語るはずだった『本音』が拡散されれば、どんな未来が想定されるか」と問いかけた。
しかしトップが、意図せず流出したLINEのみならず、「公の場」で本音をぶちまけてしまった今、新体制が消費者や従業員の信頼を取り戻すためには、かなりの茨の道を歩まねばならないだろう。そして、今や「当事者」となり、義憤に駆られているネットユーザーたちに向き合っていくことも、SNS時代である今は、求められるはずだ。
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