"男尊女卑的な価値観"が「依存症を助長」の深刻度 「男らしさ」「女らしさ」が人びとを追い詰める
ジェンダー平等が叫ばれ続ける時代になっても、いまだに多くの人が、価値観の奥底にある「男らしさ」「女らしさ」という枠組みから逃れられずにいる。
これまで2500人以上の性犯罪者の治療に携わってきた、大船榎本クリニック精神保健福祉部長の斉藤章佳さん(精神保健福祉士・社会福祉士)は、摂食障害やホームレスの経験を経て、「男らしさ」へのこだわりから解放された。
さらに長年にわたる加害者臨床の実践を通じて、日本社会の男尊女卑的な価値観が人びとを追い詰め、さまざまな依存症の温床になっていると考えるようになったという。斉藤さんに、日本社会が「男尊女卑依存症」から回復するための処方箋を聞いた。
「性別で価値が決まる」サッカー断念が転機に
斉藤さんは筆者の記事などで、男性優位な社会の中、男性が女性を“支配すべき存在”と下に見たり、「痴漢くらいしたって減るものじゃない」と“モノ化”したりする男尊女卑的な価値観が、小児性犯罪(ペドフィリア)や盗撮、痴漢といった性加害の根本にあると指摘してきた。
今回の取材ではさらに「生い立ちを通じて、私自身にも男尊女卑的な価値観が根を張っていると、つねに意識しています」と話した。
斉藤さんは、長く男子が生まれなかった家の「待望の後継ぎ」だ。祖父母は男の孫が生まれたと知って「天皇陛下の方に向かって万歳した」ほど、喜んだという。
「旧弊な地域性もあってか、『女のくせに』という言葉が飛び交うような家父長的な家で、子どもながらに『生まれた性別で人の価値は決まる。男に生まれてよかった』と思って育ちました」
高校時代にはサッカー部に所属し、ブラジルに短期留学するなど、プロを目指すほど打ち込む。「男は勝負どころで負けてはならない」「男の約束は絶対」といった体育会的な思考もしっかり刷り込まれた。しかし度重なるけがで競技を続けられなくなり、「死んだほうがましだ」と思うほどの挫折感を味わった。
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