原油価格は中国経済が不調でも上昇の懸念がある OPECプラス減産に加え他の要因も価格を下支え
もちろん、世界的な需要の伸び悩みに対する懸念も依然として根強い。だが、エネルギーは「生活必需品」としての特性があり、景気が悪化する中でも思ったほど需要は大きく落ち込まないものだ。
たとえ、相場を積極的に押し上げるほどの力強い需要の伸びが期待できなくても、サウジとロシアで日量150万バレルの減産が行われることの効果を打ち消してしまうほど需要が急速に落ち込むことも考えにくく、世界市場で需給逼迫することは避けられないだろう。
石油在庫はこの先、取り崩し傾向が強まりそうだ
そうした中、今後は石油在庫の推移にも、十分な注意を払う必要がある。
そもそも、欧米では昨年末からの記録的な暖冬が続いたことで暖房需要が減少、在庫は大幅に積み増しとなった。
しかも、昨年後半については特殊要因もあった。OECD(経済協力開発機構)諸国の民間在庫は、2022年前半には過去5年平均を大幅に下回る水準まで切り下がっていた。だが、アメリカが主導する形で戦略備蓄原油(SPR)を放出した影響もあり、同年後半からは民間で急速に積み増しが進み、今年前半にはほぼ平年並みに近いところまで回復してきた。こうした在庫の旺盛な積み増し圧力もまた、相場の重石となってきたのは間違いないところだ。
ところが、なんと、その在庫に関して「今後取り崩し圧力が強まる」との見方が浮上してきているのだ。
これは上述の産油国の減産による需給の逼迫対策ももちろんあるが、それよりも注目を集めているのが、「利上げ」や「金利高止まり」が在庫の取り崩しを促すというシナリオだ。
単純に考えれば、金利高止まりは景気減速や需要の落ち込みにつながるという点で弱気材料視されるべきところだ。だが、高金利継続は、石油在庫の保管や維持コストを押し上げる結果、業者は在庫を大量に抱えることを避けようとする。
もし石油価格が上昇基調にある時なら、相場の上昇によって維持コストなど簡単に賄うことができてしまう。だが、現在のような先高感があまりない相場ではそれもままならない。石油業者にコスト削減のため手持ちの在庫を処分しようとする動きが強まってくれば、足元の需給引き締まりと相まって、在庫取り崩しのペースが思った以上に速まることもありうる。
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