原油価格は中国経済が不調でも上昇の懸念がある OPECプラス減産に加え他の要因も価格を下支え
「在庫が取り崩されるのであれば、供給が増えるのだから価格は上がらないのでは」と思う方も多いだろう。
だが、そうではない。もし在庫の取り崩しがこうした予測どおりに進み、再び平年を大幅に下回る水準まで下がってくることがあればどうなるか。市場は突発的な供給不安に対して極めて脆弱になる。
ごく最近は原油関係であまり大きなニュースはないが、リビアやナイジェリア、イラク北部など情勢が不安定な産油国や地域では、いつ反政府勢力の破壊工作などによって石油生産が停止しても不思議ではない。
例えばイランに関しては、「アメリカとの間で核合意の交渉が進展している」との見方が、原油先物市場では弱気材料視されている。だが、一方では7月に入って「イラン革命防衛隊がペルシャ湾で商業船を拿捕した」などと伝わるなど、緊張状態は続いている。
ハリケーンなどあればすぐに価格上昇の「脆い構造」
さらに、この先はアメリカが本格的な「ハリケーンシーズン」に入ることで供給不安につながる可能性がある。
大型のハリケーンがメキシコ湾の生産施設を直撃、一時的にせよ生産が停止してしまうというリスクは9月末あたりまで、常につきまとう。
本来なら戦略備蓄原油というものは、こうした突発的な供給停止に対処すべく、各国に保有が義務付けられているものだ。
だが残念ながらアメリカのジョー・バイデン大統領は「ガソリン価格の抑制」という、目的からかけ離れた意図で放出した。そのため、民間の在庫は回復傾向をたどったものの、同国の戦略備蓄の水準は約40年ぶりの低水準にまで落ち込んでいる。もちろん、それでも今後深刻な問題が生じれば、戦略備蓄は放出されることになるのだろうが、それは将来の供給不安を一段と高めることにもなりかねない。
この先、在庫の取り崩し傾向が本格的に強まるようなら、先物相場は1バレル=70ドル台後半から80ドル台まで値を回復することになると思われる。もし今何か突発的な供給障害が生じることがあれば、さらに10~20ドル急伸することがあっても、何ら不思議ではないと思われる。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら