大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も

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欧州は一般の鉄道もプラットホームが低いが、市街地の併用軌道区間はそれよりも低いため、両方のプラットホームに対応すべく乗降扉の下側には併用軌道での乗降時に開く「収納式ステップ」が設置されている。

ザールバーンの車両は市街地では時速40km程度で走るものの、ひとたび在来線の線路に入ると最高時速100kmまでスピードを上げる。ドイツの街中にある路面の停留場で「低床トラム」に乗ったはずが、途中から時速100kmで爆走し、さらに終点では別の国にある駅のプラットホームに降り立つという経験はザールバーンならではのものだろう。

鉄道線内を走るザールバーンの車窓風景
ザールバーンの車両は鉄道線内では最高時速100kmで走行できる(筆者撮影)

多くの国境で出入国審査の必要ない欧州では、列車に乗っていて気づけば国境を越えていたということは珍しくないが、鉄道線に乗り入れているとはいえ、路面電車の終点が隣国というのは珍しい。

環境配慮の交通機関

近年、欧州ではトラム網の増強が盛んに行われてきた。温暖化対策としての二酸化炭素排出量削減や、公共交通中心の街づくりといった狙いで、かつて廃止した都市やもともとトラムがなかった街での整備も多い。日本では基本的に路面電車の編成超は最大30mまでに抑えられているが、欧州のトラムはザールバーンも3車体で40m近く、さらに他都市でも5車体や7車体、複数編成をつないで走るケースもある。1編成当たりの乗車定員も多い。

日本でも富山のLRTや福井のえちぜん鉄道・福井鉄道での路面電車タイプの車両による乗り入れなど最近は路面電車をめぐる動きが増えてきている。日本では「国際路面電車」は無理だが、環境意識が高まる中、芳賀・宇都宮LRTに次いで、日本でもLRTが積極的に導入される日は来るのだろうか。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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