大陸ならでは?「国際路面電車」驚きの隣国直通 ドイツの街中からフランスへ、時速100km運転も

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北側は、最初の開業が19世紀後半にまでさかのぼる「レーバッハ・フォルクリンゲン線(Bahnstrecke Lebach–Völklingen)」につながっている。同線は1985年をもって一旦旅客運行を終了し、その後は保存鉄道として不定期に列車が走っていた。2010年代に入って復活構想が持ち上がり、2014年にザールバーンと直結した。同区間は非電化区間のまま放置されていたため、ザールバーンとの接続に伴い、市街地区間と同じ直流750Vで電化された。

一方、ザールブリュッケンの市街地から南に向かう路線はやはり途中でドイツ鉄道(DB)の在来線ザールブリュッケン・サルグミーヌ線(Bahnstrecke Saarbrücken–Sarreguemines)へと乗り入れる。こちらは1997年の開業時から直通している。電化方式はザールバーンと在来線とで異なっており、在来線側は交流1万5000Vで電化されている。そのため、車両は直流・交流双方の電気方式に対応しており、地上側も電気方式を切り換えるためのデッドセクションが両線の接続駅に設けられている。

ザールバーン ブレバッハ駅
南側へ向かうザールブリュッケン・サルガミーヌ線のブレバッハ(Brebach)駅に停車するザールバーンの車両。ここから鉄道線に乗り入れてサルグミーヌへと向かう(筆者撮影)

終点はフランスの街

そして、ザールバーンの南端の終点であるサルグミーヌ駅は、国境を越えた先のフランス国内にある。そのため、ドイツのトラム車両がフランス国鉄(SNCF)の駅に入り込むという不思議な光景が見られる。

SNCFサルグミーヌ駅 ザールバーントラム
フランス国鉄(SNCF)サルグミーヌ駅に乗り入れたザールバーンの車両(筆者撮影)

もともとフランスは多言語対応があまり活発でないが、サルグミーヌ駅も例外ではない。トラムという市民生活に直結した乗り物が隣接するドイツから出入りしているにもかかわらず、駅内に旅客向けのドイツ語案内表記が全くないのがとてもユニークだ。

車両はボンバルディア(現・アルストム)製の「フレキシティ・リンク」と呼ばれるタイプで、開業時に導入された。車内の約半分のスペースが低床構造となった部分低床車で、鉄道線と路面電車を直通する車両としては世界初の低床構造を採用した車両でもある。路面電車といっても3車体で全長は40m近い大型車両だ。

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