新橋ビル爆発で学ぶ「ガスの扱い」我々ができる事 決して他人事ではない、身を守るための対策は
「蓋がされていたガス管の栓を工具で開けるなどして、結果的にガス漏れを引き起こしたのであれば、内装業を請け負った業者、および作業者個人も業務上過失致傷、ガス事業法違反の刑事責任を問われる可能性がある」
実際にどのように爆発に至ったのか。
松丸さんの警視庁への取材によれば、爆発当日の午前9時ごろから3階部分で水道関連の内装工事が始まり、午後1時ごろに終了したという。その間に、作業者が床に出ていたガス管の栓を工具で回したとみられる。
作業者は「ガス管とはわかっていたが、ガスが通っているとは思わなかった」とも供述しているという。
3階の工事が終わった約2時間後。2階のカフェバーの店長がたばこに火をつけたところ爆発した。カフェバーの関係者がガスのにおいを感じていたという報道もある。いずれにせよ、3階床下のガス管から漏れたガスが2階に充満し、たばこの火に引火して爆発したと考えられる。
ガスのにおいはしなかったのか?
ここで注目すべきは、3階で作業に当たっていた作業者が、ガスのにおいなどを感じていなかったから、工具でガス管の栓を回してしまった可能性が高い、ということだ。
家庭や店舗などには都市ガスやプロパンガスが利用される。
都市ガスはメタンが主成分で空気よりやや軽く、プロパンガスはプロパンとブタンが主成分で空気より重い。いずれのガスも本来は無臭だが、私たちに供給されるガスは事故防止のためににおいがつけられている。
このビルの場合、3階部分は室内でにおいが感知されなかった可能性が高いことから、空気より重いプロパンガスの可能性がある。今後の捜査で爆発の原因や状況が徐々に明らかになっていくだろう。
実は、工事の際のガスの取り扱いについては、大手ガス会社のホームページには、建築業者に宛てた「工事のためのガス供給を停止する方法」で具体的な注意事項が明記されている。
このほか、解体や内装工事の際には、ガス管を敷地の境界部分から切断する「地境切断」と呼ばれる措置を、ガス会社に行ってもらわなければいけない、となっている。要するに、工事の際のガスの取り扱いは、通常の供給停止措置よりもかなり厳格に行う必要があり、ガス会社の立ち合いも必須ということなのだ。
松丸さんは内装業者がガス会社へ事前に連絡や相談をしていたかどうかについて、「行われていなかったのではないか」と疑問を呈したうえでこう主張する。
「ガスのようなにおいがしたという証言が2階の関係者から出ているが、『ガスのにおい』と通報するかしないかを、個人に頼るというのはよくない。2階の店舗はガスの契約をしていなかったということだが、このビルのいずれかの階でガスを使っているのであれば、ビルの権利を所有する管理者は、ビル全体にガス検知器を設置する必要があった」
これに対して、爆発の研究・安全対策が専門の桑名一徳・東京理科大学教授は、雑居ビルのガス検知器の設置について問題点を指摘する。
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