ホンダが「脱エンジン」で大ナタ、系列は戦々恐々 宗一郎時代から取引の八千代も印企業に売却へ

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近年、ホンダは系列部品メーカーの再編を急ピッチで進めている。2021年にはショーワ、ケーヒン、日信工業の系列3社を、日立製作所の完全子会社だった日立オートモティブシステムズと経営統合させて日立Astemo(アステモ)を発足(当初の出資比率は日立66.6%、ホンダ33.4%)。2022年にはキーシステムが主力のホンダロックをミネベアミツミに売却した。

一方、ランプ大手のスタンレー電気への出資を5%台から10%弱へ引き上げたほか、日立アステモに対する出資を40%へ引き上げを決めている(実施は2023年9月)。「緩やかな垂直統合によるサプライチェーンを構築する」(三部敏宏社長)方針の下、重要性を鑑みながら系列部品メーカーとの距離感を調整している。

今回、ホンダは49.6%分の八千代株を165億円で取得し、81%分の株式を190億円で譲渡する。もともと保有していた八千代株もあるので単純には言えないものの、儲かる取引とはいえそうにない。脱エンジン、EV強化を急ぐホンダに系列を支える余裕がなくなりつつある現実がうかがえる。「ホンダに頼らず、自立して生きていけということだ」。あるホンダ系部品メーカーの首脳は八千代売却の意味をそう読み解く。

ホンダに頼らない生き方の模索が始まる

すでにホンダ系列ではホンダ依存度を引き下げようとする動きが広がっている。自動車シートが主力のテイ・エステックは、2023年3月期時点で1割に満たない非ホンダ売り上げを2030年までに3割まで引き上げる目標を打ち出した。車体部品を手がけるエイチワンは、非ホンダ売上比率を直近の12%から2026年3月期に2割以上に高める目標を掲げる。とはいえ、非ホンダを増やしてもホンダが中心であることは変わらない。

ホンダの三部敏宏社長は2040年の脱エンジンを打ち出し、EVシフトを急ぐ(撮影:尾形文繁)

ホンダはアメリカと中国を中心にさらにEVシフトを加速させる方針を示しており、系列再編はこの先も続きそうだ。ホンダと資本関係があり、エンジン関連部品を手がける企業だけでもユタカ技研や田中精密工業など複数存在する。

「(経営規模や生産数量で勝る)トヨタ系はさておき、ホンダ系は系列で仕事を囲うやり方がすでに崩壊している。八千代にとってもホンダの出資に頼らない生き方を早い時期に与えられてよかったのでは」。ホンダ系部品メーカーの中には前向きに捉える声もある。

各社で得意な商品や地域、経営体力も異なる中、ホンダがどのような再編の絵を描くのか――系列はかたずをのんで見守っている。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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