ホンダが「脱エンジン」で大ナタ、系列は戦々恐々 宗一郎時代から取引の八千代も印企業に売却へ

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それだけに、今回の発表に対する他のホンダ系部品メーカーの衝撃は大きい。

ある部品メーカーの幹部は「まったく予想もつかなかった」と驚きを隠さず、「ホンダのEV(電気自動車)シフトに向けた覚悟を感じる」と語る。別の部品メーカーの幹部は「インド企業はドライな部分がある、八千代の雇用がしっかりと守られるのか」と話す。一方、「エンジン系部品メーカーの再編は予想されていたことだ」と冷静に見る声も少なくない。

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ホンダは2040年までに世界で売る新車をすべてEVかFCV(燃料電池車)にする目標を掲げ、EVや自動運転、ソフトウェアといった次世代領域の研究開発を進めている。

八千代の主力製品はガソリン車やハイブリッド車(HV)向けの燃料タンクで、売上高の25%を占める。2018年4月に完成車生産をホンダに譲渡してなお2輪部品も含めたホンダ依存度が9割に達する。エンジン関連主体の事業構造の転換と、非ホンダ向けの開拓が大きな課題となっていた。

関心を示した3社のうちの1社がマザーサン

ホンダや八千代の開示資料によると、両社は2021年6月下旬以降に今後の成長戦略に関する協議を開始。同年12月以降は第三者への八千代の売却について具体的に検討を始めた。国内外19社に意向を確認したところ関心を示した3社のうちの1社がマザーサンだった。

マザーサンはワイヤーハーネス部品が主力で、インド発祥ながらグローバルに買収を繰り返し、現在は世界で300以上の生産拠点と約13万人の人員を抱えるまでに成長した。2022年3月期の売上高は79億ドル(約1兆1000億円)。昨年、日産自動車系部品メーカーのマレリが経営破綻した際は一時買収に向けた意欲を見せていた。

欧州系自動車メーカーとの取引がメインで、日系メーカーは未開拓に近い。地域的にも八千代が主力とする日本や北南米が手薄なため、生産、調達から販売まで八千代との相互補完による相乗効果が得られると判断したという。ホンダも、マザーサン傘下となったほうが八千代の事業拡大に弾みがつくとして売却を決めた。

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