安倍演説は中国に「和解への期待」を与えた 国営通信社の反応を真に受けてはいけない

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問題は、今後だ。安倍首相は、アジア諸国とも和解していく意思を持っているのだろうか。

太平洋からインド洋まで平和の海を作っていくとの安倍首相の思いは、中国でも詳しく伝わっている。しかし、一方で日米の同盟とは、すなわち軍事同盟だと、多くの中国人が思っている。その軍事同盟を深化させる安倍首相の戦略がアジアの安定に繋がるか、という点で疑問は残る。

中国は米国と軍事的に対立する考えはなく、さらに日本と戦争をすることも、まったく考えていない。日米軍事同盟の深化が中国を牽制するためのものだとしても、日本が中国との戦争を目指す第一歩を踏み出したとは、中国では誰も思っていない。

日本とアジア各国が和解するためには、今後の経済交流を深めつつ、すべての戦死者に対する共同の追悼活動、さらに相手国へ理解する気持ち、感謝の気持ちが必要になるだろう。

「われわれが南京大虐殺の犠牲者のために慰霊祭を行うのは、平和を大事にし、守っていこうという気持ちを呼び起こすためだ。恨みを受け継ぐためではない。中日両国人民の友好関係は末永く続けねばならない。歴史を鑑とし、未来へと向かい、ともに人類の平和のため貢献していこう」

2014年12月13日、南京大虐殺記念式典において習近平国家主席は、このように発言した。同じ内容はおそらく9月3日の抗日戦争勝利70周年の式典でも繰り返すだろう。

中国はフランスのようになれるか

一方で中国側も、いっそう寛大にならなければならない。「戦後になってフランスがドイツを受け入れたので、ヨーロッパの和解があった。中国はアジアのフランスになれるか、それが課題だ」――日本問題の専門家は、筆者の書いたバンドン関連の記事に対し、こうコメントした。中国側が折れることなくして、アジアの和解はないことは、多くの中国人が分かっている。

今回の安倍首相の訪米は、米国との和解、関係強化がうまく進んでいることを示した。となれば、次のステップとして、日本はアジア諸国との和解も真剣に考えるのではないか――安倍首相のスピーチは、中国人にそのような期待も与えたのである。

陳 言 在北京ジャーナリスト

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ちん げん / Chen Yan

1960年、北京生まれ。1982年南京大学卒業後、経済日報入社。日本語通訳を兼ねて日本経済、アジア経済を報道。1989年から日本に留学、1999年に慶応義塾大学経済学研究科博士課程修了。2003年に中国に帰国し、月刊『経済』主筆、『中国新聞週刊』主筆を経て、2010年から日本企業(中国)研究院執行院長。2019年1月から月刊『人民中国』副総編集長。『中国鉄鋼業における技術導入』(萩国際大学出版会)など多数の著書がある。

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