ホンダの悩み、「増収でも利益が伸びない!」 収益率低下を招く3つの要因とは?
販売台数の伸び悩みに加えて、為替のマイナス影響も痛い。前期は円安効果で790億円の増益要因となったが、今期は逆だ。米ドルの独歩高でブラジルやカナダなど生産拠点を構える国々の通貨が安くなっている。これが円安のプラス効果を完全に打ち消し、為替全体で850億円もの利益押し下げ要因になる見通し。
特に影響が大きいのがブラジルで、鉄鉱石などの資源価格が下落したことで景気が低迷。2015年3月にはドルに対してレアルが12年ぶりの安値をつけた。ブラジルでは年産12万台の四輪車工場が稼働しており、従来はレアル高を受けて、米ドル建ての輸入部品を増やしてきた。ところが、ドル高・レアル安が進んだことで、部品の調達コストが上がり、収益性が悪化している。
為替リスク低減の方策
為替のマイナス影響について、岩村副社長は「部品の現地調達率を引き上げ、地域間の補完体制をさらに進めることで為替タフネス(耐性)も上げていきたい」と説明した。地域間の補完体制とは、需要がある場所で生産する「地産地消」を原則としつつ、80~90%は現地市場向けに出荷し、10~20%を他国に輸出するというもの。各工場の稼働率を高めることで、為替変動のリスク軽減を図る。
日本国内では販売が低迷する中、生産の補完ができる輸出車が用意できていなかったため、稼働率の低下に見舞われた。この反省に立ち、今期の後半からは、米国市場向け「フィット」と欧州向け「ジャズ」(日本名=フィット)あわせて5万台を埼玉県の寄居工場で生産して輸出する計画だ。前期の輸出台数は3万台だったが、今期は8万台を予定しており、国内生産の1割近くを占める見通し。
二輪事業の営業利益率は10%前後と高いものの、当然ながら、利益額で見れば四輪事業がもっとも大きい。その四輪の営業利益率は品質関連費用の増加もあり、2015年3月期は2.8%に低下した(2014年3月期は4.4%)。ホンダは今年、自動車レースの最高峰であるF1に7年振りに再参戦を果たし、創業者、本田宗一郎の悲願の夢だった航空機市場でついに販売を開始する予定だ。こうした展開も四輪事業の安定的な収益があってこそ。
6月に社長に就任する八郷隆弘氏にとって待ったなしの経営課題は、顧客の信頼回復と四輪事業の体質強化にありそうだ。
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