医薬品卸「トップ再任賛成率」そろって急落の危機 ISSが反対推奨、背景に業界が苦しむ特殊体質も

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もっとも、事業環境が厳しいとはいえ、談合などの不正を正当化する理由には当然ならない。逆風が強まる中、ここに来てようやく、従来の“体質”を自ら変えようとする兆しも見えつつある。

一例が、営業担当者(MS)の評価項目の変更だ。医療機関などと薬の販売価格を交渉するMSは、これまで販売数量をベースに評価されてきた。しかし数量を追い求めるあまり、低価格で販売してしまえば利益は確保できない。

ある4大卸で働く30代のMSは「売り上げの計画数値はあるが、今は利益が重視されるようになってきている」と明かす。リストラが続いた製薬企業の営業担当者(MR)の代わりとなるような、医薬品の情報提供スキルなどに対する評価比重も上がっているという。

最大手のアルフレッサHDでは、MSの評価基準について、利益に関する項目の比重を以前よりも大きくしている。例えば、過度な値引きをせずに売る、配送コストを下げるために回数をまとめて配送するなど、利益改善につながる活動ができたかどうかといった点を重視する。

大手4社そろってPBRは1倍割れ

スズケンでも従来、MSの評価項目の中では売り上げに重きが置かれていたが、2022年以降、利益の評価項目の比重のほうが大きくなった。

同年の統合報告書では「売り上げやシェアを上げれば利益が連動する構造」は終わりを迎えているとし、「適正価格での販売を徹底することで利益を大きく改善」すると宣言。利益評価項目によりインパクトを持たせることで、社員の意識改革を進めているという。

売り上げ至上主義からの転換は、まだ明確な成果には結びついていない。各社は本業以外でも稼ごうと、デジタル分野への投資や新薬の開発参入などに手を広げているが、これらも利益貢献へは道半ばだ。

利益率低迷の続く大手4社に対する市場評価は低く、PBR(株価純資産倍率)は各社ともに1倍割れだ。トップ選任への賛成率の低さは、薄利体質から依然抜け出せない現状に対する厳しい評価も含まれているのかもしれない。

逆境を、変革するチャンスへと変えることができるか。医薬品卸は今まさに正念場を迎えている。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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