医薬品卸「トップ再任賛成率」そろって急落の危機 ISSが反対推奨、背景に業界が苦しむ特殊体質も

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医薬品卸業界では、各社が共通して取引のある製薬企業などから製品を仕入れるケースが多い。そのため品ぞろえでの差別化が難しく、薬局や医療機関に卸売りする過程では価格競争が起きがちだ。

薬局や医療機関側からすると、安く入荷すれば、販売価格との差額を利益とすることができる。目下勢いを増している大手調剤薬局グループなどは購買力がある分、卸への値下げ圧力も強い。

しかし卸売価格の過度な値引きは、製薬企業や医薬品卸の首をのちのち絞めることがある。「薬価改定」の存在だ。

医薬品の仕入れ・卸売価格は個別交渉によって企業が自由に決められる一方、医療機関や薬局が患者に販売する際の薬の最終的な価格は、1つ1つ国が定めている。

医薬品には医療保険が一部適用されるため、国は財政負担を減らす目的などから、医療機関が実際に仕入れた価格を定期的に調べ、値下げされている場合はそれに合わせて薬価を引き下げる。結果として薬価改定はほとんどの場合「マイナス改定」となっており、業界全体で毎回4~7%引き下げられている。

「利益が出ないからやめる」はできない

薬価の引き下げに伴い、製薬企業では、前年と同数の薬を売ったとしても売り上げが減少する。少子高齢化が進む国内では販売数量の大きな伸びが見込めないため、メーカーは薬価の引き下げを防ごうと、最近では医薬品卸に対する納入価格を高く設定しようとする傾向もみられる。

安く買いたい医療機関と、高く売りたい製薬企業――。その間で板挟みとなった医薬品卸は薄利体質が染みつき、直近5年の大手4社の営業利益率は0~1%台をさまよう。談合も、そうした環境下で利益をどうにか確保しようと画策した末に発生した。

医薬品卸大手4社の営業利益率推移

そこに追い打ちをかけたのが、本来2年に一度だった薬価改定が2021年以降、医療費の増大を背景に、毎年行われるようになったことだ。物流費高騰も収益を圧迫する一方、医療機関側では共同購入によって値下げ交渉力を強める動きが広まり、医薬品卸を取り巻く環境は急激に悪化している。

「生命に関わる商品なので、『利益が取れないから扱いをやめる』というわけにもいかない。最近の薬は温度管理が厳しいタイプも多く、流通コストも増えている」。ある医薬品卸の社員はそう嘆く。

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