米議会はオバマに貿易促進権限を与えるべき 米ハーバード大のマンキュー教授が忠告
カプランによれば、有権者は優れた政策の主旨を理解していないどころではない。ただの無理解であれば特定の傾向はないし、人口が多ければ平均化されて大した影響もない。だが実際には、有権者は無知なばかりか、誤った思い込みにしがみつく傾向がある。
政治家というものは、選挙で当選するのが第1の目標だから、そうした誤った思い込みをもとにして悪い政策を作ってしまう。カプランはこう書いている。「完全に理性的な政治家が不合理な有権者――具体的に言えば、さまざまな政策のもたらす影響について不合理な思い込みをしている有権者――の支持を競い合ったら何が待っているか。嘘つきの処方箋だ」
貿易問題、3つのバイアス
カプランは貿易問題の場合に特に問題となる3つのバイアスを挙げている。
ひとつ目は反外国バイアスだ。自分の国は他国との競争のただ中にあると考え、外国との商売がもたらす利益を過小評価する。経済学では、外国との貿易は戦争と違って双方が得することが可能だとされているのにだ。
2つ目は反市場バイアスだ。資源配分の導き手としての市場メカニズムの恩恵を過小評価する。だがもうひとつの選択肢――つまり計画経済がうまく機能しないことは歴史が繰り返し証明している。
3つ目は雇用創出バイアスだ。労働力を温存することの利益を軽視し、輸入によって輸入品との競争にさらされる分野での雇用が減ることを懸念する。だが長期的な経済発展は、労働投入量をいかに減らして、余った労働力を新しい成長分野に回す方法が見つけられるかにかかっている。
プリンストン大学のアラン・ブラインダー教授はかつて「経済政策に関するマーフィーの法則」を提唱した。「経済学者の影響力は、彼らが最も精通し、最も意見が一致している分野で最小となり、最も知識に欠け、最も意見がそろわない分野では最大となる」というものだ。
国際貿易はまさにこれにあてはまる。今後数週間、上下両院の議員たちはブラインダーの説が間違っていることを証明するチャンスを与えられている。このチャンスをものにしてくれることを期待しよう。
(執筆:N. Gregory Mankiw、翻訳:村井裕美)
(c) 2015 New York Times News Service
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