新交通消え「桃花台ニュータウン」はどうなったか こまめに走るバス路線網が「鉄道不要」を証明?

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ユニークな存在なのが、こまき巡回バス「こまくる」だ。小牧市が運行するコミュニティーバスで、あおい交通に委託されている。小型バスを使用し、桃花台ニュータウンのみならず、小牧市内のかなり細い生活道路まで入り込んで、まさに網の目のように路線を広げている。

名鉄バスやピーチバスとは連携、補完関係にあり、これらのバスの定期券を持っていれば無料で利用可能。運賃は200円だが、1度支払えば、当日中は乗り降り自由となる制度が面白い。ピーチバスからこまくるへ乗り継ぐとこまくるが無料になり、こまくるからピーチバスへ乗り継ぐ場合も、ピーチバスの運賃が2回乗車分、50円引きになる。

桃花台センター上バス停に到着する「こまくる」。背後は旧桃花台センター駅の駅舎(筆者撮影)

桃花台新交通はニュータウンの中央部を横断していただけであったが、現在のバス路線網は高速バスからコミュニティーバスまで、ニュータウン内を巡回して、随所で乗降が可能になっている。

バスの機動力を生かして自宅や用務先近くを経由させることで、いったん鉄道駅へ出向かせて乗り換えさせ、多数を集約して運ぶ方式から、人口減少、高齢化時代にふさわしい、細かく分散した需要にできるだけ直通で対応する輸送方式に転換したのだと見て取れた。

丘陵地に建設されたニュータウンは、歩道と車道の分離が意識された設計になってはいるものの、坂道も多いため、自家用車社会の愛知県であっても、こまめに走る路線バスの存在はありがたいだろう。

課題はバリアフリー化か

大規模商業施設「ピアーレ」「ピエスタ」や行政施設が集まる桃花台センターはすべてのバス系統が経由。惜しむらくは、こまくるを除いて、乗り場が周辺の幹線道路上に分散しており、停留所へ到達するのに階段を使うルートも多く、バリアフリー化が十分ではないことか。

こまくるだけは、ピアーレの目の前にある桃花台新交通旧桃花台センター駅前の「桃花台センター上」バス停にも入りこむ。小規模なバス専用のロータリーがあるが、駅施設を撤去して、この位置に大規模なバスターミナルを設け、すべてのバス系統が集約されればよいのにと思う。

桃花台東に到着した近距離高速バス
桃花台東に到着した近距離高速バス(筆者撮影)
ピーチバス大城バス停
桃花台東駅跡のピーチバスのバス停は地域名の大城を名乗る(筆者撮影)

小牧市役所で入手した、こまくるの路線図・時刻表が優れものであった点は付記しておきたい。1枚ものの紙やPDFで提供されており、名鉄バスやあおい交通の路線バスも明記。これまで、さまざまな市町村営バスの案内を見てきたが、小牧市の公共交通機関への力の入れようは、この路線図や、市の公式サイトのこまくるの案内の情報量の多さ、丁寧さを見れば出色だとわかる。桃花台新交通は失敗だったかもしれないが、決して地域の交通を軽視しているわけではないのだ。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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