常識外な「悪質クレーマー」を犯罪心理学者が分析 クレーマーとストーカーは心理状態が似ている
「この2つの理論は、悪質クレーマーにも共通します。クレームで得られる自己承認などの『心理的な利益』と、通報などの『リスク』を天秤にかけて、店員や店の状況を判断しながら合理的な選択をしてカスハラをしています」(桐生教授)
実際、桐生教授が、2020年にインターネット上で男女2060人に行ったカスハラ調査では、全体の45%にあたる924人が「悪質なクレームを起こしたことがある」と答えた。この結果からも「普通の人」がカスハラ行為に及んでいることが分かる。
プロファイリングの考え方をカスハラ対策に応用
犯罪心理学の観点からカスハラを分析し、桐生教授が考案したものが「カスハラ・プロファイリング・メソッド」だ。プロファイリングは膨大なデータを統計的、心理的に分析する手法で、犯罪心理学でよく使われる。
メソッドでは、実際にカスハラにあった時の具体的な対応策を示した。まず深呼吸して心を落ち着かせて、客の年齢や言動を観察する。その上で筋の通ったクレームなのか、粗暴なカスハラかなど4つのパターンに分け状況を整理し、パターンに合った対応をとる。最後は対応した人の心のケアを行うことも忘れない。
中小企業では、具体的なカスハラ対策をつくっていない企業も多く、メソッドで具体的な対応を示すことで従業員も安心できる。桐生教授らは近く、メソッドが書かれているカードを用いてスーパーなどでの実証実験を行う計画だ。