前回記事でもコメントをいただいた、法務領域の転職サイトを手掛けるMS-Japanも「企業法務を扱う事務所は中堅企業からの依頼が増えており、弁護士の募集にも積極的。その一方で個人対象の一般民事に特化している事務所はかなり苦しそうに見える」という。
また、「企業の法務部が弁護士事務所をうまく使い分けるようになり、中堅以下の規模の企業でも、もはや大事務所の言うなりに高額の報酬を支払うということがなくなっている。一方で超大企業から来る大規模な案件は、大事務所同士の競争に晒されており、大事務所こそ経営環境は厳しくなっている」(同)そうだ。
基本的に企業の法務部員は他社の法務部員と仲がいい。密に連絡を取り合い、特定の弁護士に対する評価や報酬の値切り方まで、他社の経験に基づく広範囲な情報が共有されやすくなった。近年特に企業の弁護士事務所に対する交渉力が高まっている理由も、そのあたりにある。
見栄を張らずコスト抑制も上手い若手層
近年は、年商が100億円に届かない中堅企業でも当たり前に海外に工場や販売子会社を作るため、法務、会計、税務のリスクは飛躍的に高まっている。また、ITベンチャーは規模の大小にかかわらず、高い知財リスクや労務管理リスクを負う。それだけに、中堅規模の企業でも負担可能な報酬水準で対応してくれる弁護士の需要は拡大している。
弁護士登録から今年で3年目を迎え、修習の同期と共同事務所を経営する若手弁護士は、「小規模な企業法務ニーズの開拓に、上の世代の弁護士はなかなか手を付けない。自分たちの勝機はそこにある」と言い切る。
「50期代後半(=概ね12~15年程度の経験年数)の世代以降は考え方が柔軟で、コスト意識も上の世代とは違う。特に新司法試験世代は同期同士の仲がよく、見栄も張らない。共同で立ち上げた事務所では、機器を共有し、掃除もお茶出しも自分たちでやる。企業にDMを出したり、飛び込み営業をかけたり、これまで考えられなかった営業活動を展開しているのも若手」(経験年数約20年の弁護士)という。
ネット活用に対する意識も上の世代とは異なる。「企業法務案件は口コミだが、個人の案件はネットの活用度合いで明暗が分かれる。最近では弁護士ドットコムを有効に活用する若手がかなりの集客を得ているようだが、上の世代だと、広告を出すということ自体に否定的であったり、未だに事務所のホームページすら作っていない人もいるほど」(同)。
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