次に、格差は本当に拡大しているのかという点。「所得階級別構成比推移(弁護士)」をご覧いただきたい。これは各所得階級の人数が全体の何%を占めるのかを集計したものだ。
いちばん下の項目、100万円以下の階級の構成比は、2008年には12.3%だったが、2009年に20.3%に跳ね上がり、2010年には23.0%に上昇しているが、2011年、2012年、そして2013年には下がっている。
2008年と2013年を比較すれば構成比は上昇しているとはいえ、趨勢としては2010年にピークアウトし、低下傾向にあることがわかる。人数でも2008年の2879人と2013年の4970人だけを比較すれば増えているように見えるが、2010年の6086人からは1000人以上減っている。
一方で、2000万円超の高額所得層の人数の減少及び構成比の低下は著しい。1000万円超2000万円以下の層は2008年比で8%、2000万円超5000万円以下の層は約3割、5000万円超1億円以下では4割近く減っている。
これに対し、この5年間で大きく伸びているのが500万円超600万円以下の層で、この層は2008年当時は1071人だったが、2009年以降も一貫して増加し続け、2013年には1879人になっている。600万円超1000万円以下の層も過去5年間右肩上がりで、構成比率でもこの層が最も高い19%。
いちばん下の所得層と、高額所得層の人数が減っているということは格差は縮小傾向にあり、中間の500万円~1000万円の層の人数が増えているということは、極めて健全であるように見える。
扱う分野の違いで格差が生じる
弁護士がいかにリッチかは、「所得階級別構成比推移(事業所得全体)」をご覧いただければ一目瞭然だろう。申告所得200万円以下の層が6割近くを占めているのに、弁護士は2割強しかない。
統計は格差の縮小と中間層の増加を示しているのに、なぜこうも「食えない」説が跋扈するのか。
実際に「格差」は存在するのだろう。消費者被害の救済を主要業務に据えているベテラン弁護士は、「手口が巧妙化していて、被害者が勝訴判決をとれてもおカネの回収が出来ないケースは増える一方。加えて、騙す側はターゲットをおカネを持っている高齢者に絞っている。被害に遭っても裁判を起こす気力がない人が増えている」と嘆く。
一方、経験年数15年の一人事務所の弁護士は、「リーマンショックの影響も大きかったが、震災後は企業が経費を大きく削減したので、2011年、2012年は本当に苦しかった。アベノミクス以降はかなり回復し、儲かっているとまでは言えないが、事務所経営は概ね安定している」という。
案件数では企業法務が9割、離婚など個人の一般民事事件が1割程度で、どちらもほぼ堅調だという。「大企業からも大事務所が受けにくい、小規模かつスピーディな対応が必要な案件が入り、中堅規模の企業からの依頼もそこそこ安定的に入っている」と話す。
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