戦後に食べられた「ハンバーグ」その驚きの中身 米国文化の影響、戦後のベビーブームとの関係

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1946年、南氷洋における捕鯨が再開され、クジラの肉が安く大量に供給されるようになります。しかしながら、戦前からクジラを食べ慣れていたのは、一部の地域の人のみ。

食べ慣れていない子どもたちに食べさせるために、クジラは唐揚げやカツレツや大和煮など、既存の鳥獣肉料理を模した料理に加工され消費されました。

現在はもっぱら刺し身・寿司として生で消費されているマグロですが、冷凍冷蔵インフラの発達していない高度成長時代以前の日本においては、生で食べることができない鮮度の落ちたマグロが流通していました。さらに1954年には水爆実験による放射能汚染が問題化し、マグロが避けられるようになります。

そんなマグロを子どもたちが食べやすいように加工したのが、豚肉のソーセージを模した魚肉ソーセージ。

1962年に発売されたマルシンハンバーグも、当初はクジラやマグロを原料としていました。ハンバーグもまた、日本が自前で調達できた安い動物性タンパク質、クジラやマグロを団塊世代がおいしく食べるための料理だったのです。

羊肉、馬肉の輸入急増

日本も徐々にですが豊かになってゆき、1962年には畜肉を使ったハム・ソーセージの生産量が、魚肉ハム・ソーセージの生産量を追い越すこととなります(『食品と科学』1963年5月号所収 「魚肉ハム・ソーセージただいま苦戦中」)。

しかしその畜肉ハム・ソーセージとは、豚肉よりも安い肉、輸入した羊肉や馬肉を原材料としたものでした。

1959年、国内畜産業の保護のために、豚肉と牛肉の輸入が非自由化(資金割当制への移行)されます(吉田忠『畜産経済の流通構造』)。そのため、外国産の安い豚肉や牛肉が入手しづらくなりました。

ところが羊肉と馬肉に関しては、以前と変わらず自由に輸入できたのです。その結果1962年には、羊肉の輸入量は2万3192トン、馬肉の輸入量は5254トンへと急増します(『ハム・ソーセージ年鑑1965年度版』)。

現在の羊肉や馬肉は豚肉よりも高価な肉ですが、当時輸入されていた羊肉や馬肉は豚肉よりも安価な肉でした。当然のことながら、その品質も値段相応のものでした。

筆者も子どもの頃、豚肉よりも安い輸入マトンを食べていましたが、その肉は硬く、独特の匂いがありました。森雅央『食品の商品学』によると当時のマトンは老廃羊肉、つまり羊毛が取れなくなった老いた羊の肉だったそうです。

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