日本人が知らない「超近代的」マレーシア鉄道事情 複線電化が進展、新型特急電車が都市間を結ぶ

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国内の鉄道路線全体はY字型となっている。

マレーシア鉄道の主要路線

西側の路線はウェストコースト線(西海岸線)と呼ばれ、タイとの接続駅であるパダン・ブサール(Padang Besar)からシンガポール国境のすぐ北側にあるJBセントラル(JBはジョホール・バルの略)までを結ぶ。パダン・ブサールからY字の交点にあるグマス(Gemas)までは複線電化されており、グマスからJBセントラルまでの区間についても複線電化工事を進めている。

近代化が進んだ一方、以前は存在したクアラルンプール―JBセントラル間を直行する列車はなくなった。電化区間が途中のグマスまでのため、電車のETSはその先の区間に入れないからだ。グマス―JBセントラル間はKTMインターシティという客車列車が走っているが、クアラルンプールまで直通する列車は運行されていない。電化によって分断された形だ。

ただ、最近では現地の連休などに、KLセントラルからパダン・ブサール、さらに国境を越えてタイ側まで乗り入れる客車編成の臨時列車が走ることがある。普段はクアラルンプールから寝台列車に乗れる機会はないため、臨時列車が出るたびに寝台券は一気に売り切れる。

一方、Y字のもう一方、東側のイーストコースト線(東海岸線)はグマスから北部のトゥンパト(Tumpat)までを結ぶ。こちらは全線が単線非電化で、西海岸線に比べると近代化されているとはいいがたい。

近代的すぎて拍子抜け?

沿線の駅のうち、前述のクアラルンプール駅をはじめ、マレーシアで食の都として知られるイポー駅などは植民地時代の建築がそのまま使われている。一方、タイピン駅やペナン島の対岸にあるバターワース駅など、多くの駅は複線化工事に合わせて建てられた近代的な駅舎となっている。

バターワース駅
バターワース駅のホーム。ETS(左)とKTMコミューターが停車中(筆者撮影)
イポー駅
イギリス領時代の面影を残すイポー駅(編集部撮影)

一方、車両はとくに電化区間の場合非常に近代的だ。電車特急のETSは韓国・現代ロテム製の91形と中国中車株洲電力機車製の93形の2形式があり、最高時速140kmで運行。KTMコミューターも現在の主力は2012年以降に導入された6両編成の車両だ。

例えばタイからディーゼル機関車牽引の客車列車に乗って陸路でマレーシアに入ると、巨大な駅舎に新しい電車編成が何本も止まっている光景に驚かされるのではないだろうか。国境駅のパダン・ブサールには、グマスやクアラルンプールからETSが乗り入れているほか、約170kmあるバターワースとの間には通勤電車タイプのKTMコミューターが走る。

今もタイからマレーシアを経てシンガポールへの汽車旅に挑む人は少なくないようだが、かつての「マレー鉄道」の旅を実感したいと思う人には、あまりに近代化されたマレーシアの鉄道に拍子抜けするかもしれない。シンガポール領へはKTMBが運営する客車列車「テブラウ・シャトル」が走っているが、JBセントラルから両国をつなぐコーズウェイ(土手)をわずか5分走った先のウッドランズ検問所駅までで汽車旅は終わりとなる。

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