CMの概念をひっくり返す「泣ける実録」の凄み 再生30万回のネット動画は何を伝えているか
あとは映像をぜひとも見ていただきたい。筆者はこれを何度も見てしまった。思わずもらい泣きした。何度見ても泣ける。今年2月下旬に公開され、再生回数はこれまでに30万回を超えている。
「これはドラマ?」と一見思うが、大きな間違い。最後に流れるのは「Supported by TOSANDO music」の文字。いわゆるドキュメンタリーCMだ。ひとつのコンテンツといってもいい。岩手県で、書店や音楽教室を展開する東山堂が作成した映像である。
仕上がっている内容は、まるでテレビ番組のひとコマのようだ。
冒頭にナレーションが入っていたら、普通にテレビ番組のワンコーナーとして使えそうだ。放送作家の筆者から見ても、番組のサプライズ企画として、成立しそうなネタに見えている。全国ネットのテレビで放送したとしても、支持されるに違いないレベルの出来栄えだ。
きっと父親が東山堂へサックスを習いに来たときに、この企画が浮かんだのだろう。しかも、映像に言葉はなく音楽だけでそのすばらしさを伝えている。本当に素敵だ。新婦が涙を流す場面では、「あれ?これって、新婦のお父さんだっけ?」と一瞬思ったぐらい。それも含めてドキュメンタリーの醍醐味がある。
「アジア太平洋広告祭」入賞のコンテンツ力
この東山堂が、このような映像を作ったのは今回が初めてではない。実は以前にも次のような映像を作っている。
2014年3月に公開され、再生回数はこれまでに270万回を超えている。筆者は以前、ある大企業の会議でこの映像を流した。するとその企業の女性社員が号泣したことがある。
これは、完全ドラマである。俳優さんが登場している。新婦の父親がピアノを弾けるまでを物語にしている。実は、地元の制作会社「マエサク」が作り、今年3月にタイで授賞式が開かれた「アジア太平洋広告祭(ADFEST)2015」のフィルム部門で銀賞を受賞した。
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