食料高騰を救う?ウクライナ・欧州間「新貨物列車」 ハンガリーに新物流拠点、農産物輸送のハブに

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ウクライナ情勢という視点から特筆すべき点としては、EWGが農産物の積み替え拠点として大きな能力を持つということだ。ウクライナの農産物は同国にとって重要な輸出品目となっているが、ロシアの攻撃によって輸出に支障をきたしている。

これはウクライナの外貨獲得に障害となるのはもちろん、小麦などの農産物輸送が滞ることで、ヨーロッパ諸国の食料品価格にも影響が出ている。実際、パンやパスタなどは輸送のための燃料費高騰に加えて、小麦の流通量減少により、戦争開始前に比べて価格が1.5~2倍以上も値上がりしている。

食品価格高騰にも効果を及ぼすか

食料品の価格高騰がヨーロッパの市民にとって死活問題である中、EWGは農産物輸送のパイプ役という重責を担うことになる。EWGでは、1時間あたり800トンの穀物と450立方メートルのヒマワリ油を取り扱うことが可能で、いずれはウクライナ―ヨーロッパ間の農産物輸出における最大の鉄道ハブとなる計画となっている。

EWGのCEOであるヤノシュ・タロシ(János Tálosi)氏は「EWGの建設により、ハンガリーは鉄道による国際物流の地図に再びその存在を示した」と表現した。タロシ氏はまた、「EWGは中立で完全に独立しており、そのサービスは(国や企業、業種を問わず)世界中のすべての貨物輸送業者や運送業者に開放されている」と述べている。

EWGの開業に合わせ、ハンガリー政府もターミナル周辺の鉄道インフラに124億フォリント(約50億円)を投資し、列車の増発に備えて線路の新設などを行っている。

ブダペスト発キーウ行き列車
ブダペストで発車を待つキーウ行き旅客列車。ウクライナと国境を接するハンガリーは鉄道輸送において重要な役割を担う(撮影:橋爪智之)

ウクライナへの旅客列車は、戦時中においてもウィーンなどから直通列車の運行が継続されている。ウクライナとの交易を念頭に置いた、今回の各国の物流面における強化の動きは、同国にとって心強い支援となることだろう。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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