食料高騰を救う?ウクライナ・欧州間「新貨物列車」 ハンガリーに新物流拠点、農産物輸送のハブに

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ミュンヘンで開催された輸送ロジスティック見本市での記者会見で、ÖBBのCEO、アンドレアス・マッテ(Andreas Matthä)氏は、「新しい定期列車がÖBBレールカーゴグループの国際ネットワークに組み込まれることで、恩恵を受けるのはウクライナだけではない」と述べた。

UZ取締役のヴィアチェスラフ・イエロミン(Viacheslav Yeromin)氏は、「ウクライナはヨーロッパのサプライチェーン、特に原材料や農産物の分野における供給元の市場として不可欠な存在だ。質の高い輸送を通じて、ウクライナがヨーロッパの輸送ネットワークに確実に組み込まれ、生産者だけでなく受け入れ市場もヨーロッパの港や物流拠点と効率的に結びつけたい」と語っている。

ポーランド・
ウクライナ・ポーランド国境を走る貨物列車(撮影:橋爪智之)

ハンガリーに巨大積み替えターミナル

ハンガリーは、ウクライナとの国境に新しいインターモーダルのための貨物ターミナルを昨年秋に開業した。東西ゲートターミナル(The East-West Gate (EWG) terminal)と呼ばれる新しい貨物駅は、ハンガリーとウクライナの国境に近いフェニエスリトケ(Fényeslitke)に、400億フォリント(約160億円)に及ぶ民間からの投資によって「ヨーロッパで最大級かつ最もモダンなグリーンコンセプト」のインターモーダル基地として開設された。

EWGターミナルは、20フィートコンテナ換算で年間約100万個の貨物を取り扱うことが可能で、トラックや従来型の道路用セミトレーラーを鉄道へ積み込むほか、標準軌(1435mm)とウクライナの広軌(1520mm)の分界点に位置することから、両軌間の貨車の積み替えを担う。

ターミナルの最大の特徴は、ヨーロッパで初めて5G技術を用いたクレーンの遠隔操作を実現した点だという。オーストリアのキュンツ(Künz)社が供給した幅41mと幅28mのレール移動式クレーン2基と、幅20mのゴムタイヤ式クレーンは各20台の高解像度カメラを搭載し、オペレーターは5G接続によってターミナル内の管理棟から状態を監視し、遠隔操作する仕組みになっている。このクレーンで広軌・標準軌間の貨車やトラックとコンテナの積み替えを行う。

また同ターミナルは爆発物取り扱い(ATEX)および有害物質取り扱い(ADR)の認証も受けており、ガスタンクや化学物質といった特殊な物質の積み替えも可能だ。道路から鉄道への貨物輸送のシフトを促進し、ヨーロッパにおける気候・環境目標の達成に貢献することができるという。

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