鷲谷:有益さとリスクのてんびんで、お客さまがどう考えるかがポイントです。
新しい技術ですし、落ちるのではないか、バッテリーなので火事にならないかと懸念されます。落ちたときのダメージは、たとえ自社の敷地内であっても、物流倉庫の内部と、化学プラントの装置上とではまったく違います。
一方、お客さまのベネフィットが絶大だということも少なくありません。たとえば、高所点検中に年間で10人もの作業員が落下して死亡するようなケースです。これをドローンによって防ぐことができれば、その価値は計り知れないものとなります。
井上:なるほど。御社は落ちないための二重三重の工夫がされていると伺いますが、技術的な特徴や強みについてもお聞かせいただけますか。
ドローンも大脳と小脳を持つ
鷲谷:開発に力を入れてきたのは、人間でいう頭脳の部分になります。
脳には大脳と小脳があって、小脳は自律神経で自分の状態を管理してくれます。体が傾いたら踏ん張んなきゃいけないとか、体温を調整するために汗が自然に出てくるとか、そういうものです。
一方の大脳は、目とか鼻とか口など能動的に環境を認識する器官と結びついている。目とか鼻とか耳というのは外にあるセンサーで「ぶつかりそうだ」とか「知っている人がいるな」と認識できるようになる。
われわれはドローンで人間の頭脳と同じものを作っています。小脳の部分によって、体が呼吸し続けるかのように、ひたすら安全に、風が吹いてもちゃんと飛び続けられる。一方、環境を認識してくれるカメラとかセンサーといったデバイスを組み込み、大脳のように能動的に障害物や通路を認知できるようにする。
井上:裏を返せば一般的なドローンメーカーは、それができないということでしょうか。
鷲谷:われわれは小脳も大脳も2つとも自社開発できるという、世界的にも珍しい会社です。
頭脳というのは基本的にソフトウェアなので、オープンソースのものもあります。ただ、そこで使われている根本的なアルゴリズムは、いうなれば小学生レベルです。
一方でわれわれのものは、創業者の野波健蔵(千葉大学名誉教授)さんが20年間ずっと研究されてきたアルゴリズムをもとにしています。ソースコードは40万行といったレベルで大人の頭脳に近い。お金を積んだからといってできるものでもないんです。
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