実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。
井上:御社の事業について教えてください。
高田:エッジコンピューティングのためのチップを開発し、それで実現する未来を考えています。スマホや防犯カメラなどのデバイスをつなぎ、安心安全な社会を実現する。ヒトの五感を拡張し社会問題を解決するビジネスです。
今は、我々のコンピューターやスマホから、データがそのままクラウドに吸い上げられ、 GAFAはそれを加工処理し、必要な情報を手元に戻すというイメージですね。
これがエッジコンピューティングの世界になると、180度変わります。天空のデータから地上のデータへ、クラウドではなく端末にあるエッジ側にデータが溜まっていく。データがわれわれの手に移っていくわけです。
エッジが賢くなり、端末でデータ圧縮・処理を行うことができれば、そのデータを活かして非常に便利な世の中がやってくる。
例えば、通行量を調査するために、いまだにパチパチたたいてカウントしてますよね。うちのチップをセンサーにつければ、車や人が通るだけで、クラウドに上げずに瞬時に観測できるんです。末端で処理するのでプライバシーの問題もない。
チップがないと、センサーの情報をそのままクラウドに上げる必要がある。しかしエッジ側で整理すれば、価値ある情報だけを上げることができます。
井上:いわゆる分散処理ですね。クラウドに上げて処理するという設計思想に限界がきているということでしょうか。
デバイスに五感と頭脳を付ける
高田:2040年には世界人口が90億人で10兆ものデバイスが地球上にあふれると言われます。そのままクラウドに上げると通信も電力もキャパシティが追いつかない。
だから、末端で情報処理して判断できるように、エッジのデバイスに五感と頭脳が必要なんです。
人間は、映像だったら目で見て、脳が考えて、何らかの作業をします。チップがその代わりをやろうとすると、カメラのCMOSセンサーが画像データを捉えても、そのすべてをクラウドに上げるとパンクする。監視カメラにしても人間がずっと映像を見続けるわけにもいかない。
だから、機械にさせようと。セキュリティー関係や、あとは自動車の自動運転関係ですね。それに工場の仕分けで虫の混入とかを見つける。娯楽や医療もあります。センサーに脳みそを付けるというビジネスなら、いろんなところに展開できるということです。
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