天空から地上へデータ覇権をエッジAIで取り戻す ArchiTekのいいとこ取りチップはデバイスの脳

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実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

アリがゾウを倒すというのは、現代の「スタートアップ神話」かもしれない。しかし、卓越した技術にスケールするビジネスモデルが備われば現実味がないわけではない。
ここにGAFAの逆張りで、プラットフォームの覇権を握ろうとする企業がある。その名は ArchiTek株式会社。パナソニックから独立したエンジニアと興銀出身の財務責任者から成る起業家チームである。
彼らの武器は世界最高水準のエッジAIプロセッサーである。大人の指先サイズのチップで巨大なクラウドに対抗し、GAFAが天空の雲で支配するデータの流れを地上の末端に引き寄せるという構想だ。
技術について詳しく聞けば聞くほど夢は広がる。しかもビジネスモデルも魅力的なので、資金さえ集まれば象をも倒すことができそうだ。
今回は代表取締役社長の高田周一さんたちに将来の可能性について語っていただく。

井上:御社の事業について教えてください。

Architek高田周一社長
高田周一(たかだ しゅういち)/長岡技術科学大学電気電子システム専攻修士課程修了。1989年松下電器産業(現パナソニック)入社。情報システム研究所でコンピューターアーキテクチャーを研究。家電製品・携帯電話・ゲーム機などの開発に従事し2010年 退社。2011年 ArchiTek株式会社を創業。受託の傍らAI画像処理の研究開発。2018年 NEDO国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の国家プロジェクトに参画し共同でAIチップを開発。またVCからの出資を経て独自AIチップを開発。商用AIチップおよび製品開発を実施中(ArchiTek提供)

高田:エッジコンピューティングのためのチップを開発し、それで実現する未来を考えています。スマホや防犯カメラなどのデバイスをつなぎ、安心安全な社会を実現する。ヒトの五感を拡張し社会問題を解決するビジネスです。

今は、我々のコンピューターやスマホから、データがそのままクラウドに吸い上げられ、 GAFAはそれを加工処理し、必要な情報を手元に戻すというイメージですね。

これがエッジコンピューティングの世界になると、180度変わります。天空のデータから地上のデータへ、クラウドではなく端末にあるエッジ側にデータが溜まっていく。データがわれわれの手に移っていくわけです。

エッジが賢くなり、端末でデータ圧縮・処理を行うことができれば、そのデータを活かして非常に便利な世の中がやってくる。

例えば、通行量を調査するために、いまだにパチパチたたいてカウントしてますよね。うちのチップをセンサーにつければ、車や人が通るだけで、クラウドに上げずに瞬時に観測できるんです。末端で処理するのでプライバシーの問題もない。

チップがないと、センサーの情報をそのままクラウドに上げる必要がある。しかしエッジ側で整理すれば、価値ある情報だけを上げることができます。

井上:いわゆる分散処理ですね。クラウドに上げて処理するという設計思想に限界がきているということでしょうか。

デバイスに五感と頭脳を付ける

高田:2040年には世界人口が90億人で10兆ものデバイスが地球上にあふれると言われます。そのままクラウドに上げると通信も電力もキャパシティが追いつかない。

だから、末端で情報処理して判断できるように、エッジのデバイスに五感と頭脳が必要なんです。

人間は、映像だったら目で見て、脳が考えて、何らかの作業をします。チップがその代わりをやろうとすると、カメラのCMOSセンサーが画像データを捉えても、そのすべてをクラウドに上げるとパンクする。監視カメラにしても人間がずっと映像を見続けるわけにもいかない。

だから、機械にさせようと。セキュリティー関係や、あとは自動車の自動運転関係ですね。それに工場の仕分けで虫の混入とかを見つける。娯楽や医療もあります。センサーに脳みそを付けるというビジネスなら、いろんなところに展開できるということです。

次ページセンサーに付ける脳みそ=チップとは
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