実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

井上:御社の事業について教えてください。

浅利:ガスをベースにした新しいサービスを開発しています。多孔性配位高分子という材料をベースに、ガスで新たな世界をつくるというビジョンです。
ガスって目に見えず、空中にふわふわ浮いてますけども、なかなか持ち運んだりコントロールしにくい。われわれはそこから何かをつくり出し、ガスに新たな価値を付加しようとしています。
北川進先生(京都大学高等研究院物質-細胞統合システム拠点前拠点長、特別教授)は「多孔性配位高分子は、無用の用(役に立たないとされているものが、別の意味で非常に大切な役割を果たすこと)」と言います。
仙人がかすみを食って生きられるように、空気中にあるガスもうまく使えば価値あるものに変わる。まさにインビジブルゴールドというわけですね。
ノーベル賞級の素材がガスをキャッチ
井上:多孔性配位高分子! それがノーベル賞級の技術ですね。いったいどのようなものなのでしょうか。
浅利:特殊な顕微鏡で見ると分子1個分ぐらいの穴が整列されて開いている。1立方ミリメートルあたり100京個ぐらいの穴があります。

分子1個分のカプセルホテルのような穴をつくると、そこにガスが入り、とどまる。活性炭で臭いが吸着されるのと同じ原理です。物質と物質が近くに寄ると引力が働き、細孔壁面にくっつくような現象が起きます。
井上:それでガスがポータブルに持ち運びができる。ガスをコントロールできるわけですね。
浅利:われわれはCubiTanというガス容器をつくってIoT化しています。
プロパンガスをはじめ、酸素や窒素、二酸化炭素といった高圧ガスが利用されていますが、その配送は必ずしも効率的ではありません。
われわれは、どのトラックが、どのガスをピックアップして、どこに持っていけばいいかを管理したい。既に走っているトラックにピックアップしてもらえれば、無駄なCO2の排出もなくなるし、コストも下がります。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら