ノーベル賞級の素材容器で起こすガスの流通革命 素材ベンチャーAtomisが古い業界に参入する訳

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実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

ガス容器CubiTan
約30センチ四方、約10キロと軽くて小さいガス容器CubiTan®︎(Atomis提供)
奈良の阿修羅も驚く3つの顔をもったベンチャーが京都にある。ノーベル賞級の技術を活かし、型破りのビジネスモデルで勝負を挑む株式会社Atomisである。
京都大発のこのベンチャーは、天空の覇権をめぐる戦いに執念を燃やす。彼らは、素材ビジネスの顔、配送ビジネスの顔、そして環境ビジネスの顔を併せもち、必要に応じて使い分ける。
なぜ、複数の顔を持つに至ったのか。今回は代表取締役CEOの浅利大介さんに、その理由を聞いてみた。そこには素材ベンチャーならではの難しさを克服し、パートナーや投資家、そして社会を幸せにするビジネスモデルが隠されていた。

井上:御社の事業について教えてください。

ATomis代表取締役CEO浅利大介氏
浅利大介(あさり だいすけ)/京都大学大学院工学研究科でAtomis創業者の樋口雅一氏と共に金属錯体化学を専攻し、大学卒業後はアベンティスファーマ株式会社、サノフィ・アベンティス株式会社(現サノフィ)、日東電工株式会社において医薬品の研究開発および新規事業立ち上げに携わる。2017年1月よりAtomis代表取締役CEO(Atomis提供)

浅利:ガスをベースにした新しいサービスを開発しています。多孔性配位高分子という材料をベースに、ガスで新たな世界をつくるというビジョンです。

ガスって目に見えず、空中にふわふわ浮いてますけども、なかなか持ち運んだりコントロールしにくい。われわれはそこから何かをつくり出し、ガスに新たな価値を付加しようとしています。

北川進先生(京都大学高等研究院物質-細胞統合システム拠点前拠点長、特別教授)は「多孔性配位高分子は、無用の用(役に立たないとされているものが、別の意味で非常に大切な役割を果たすこと)」と言います。

仙人がかすみを食って生きられるように、空気中にあるガスもうまく使えば価値あるものに変わる。まさにインビジブルゴールドというわけですね。

ノーベル賞級の素材がガスをキャッチ

井上:多孔性配位高分子! それがノーベル賞級の技術ですね。いったいどのようなものなのでしょうか。

浅利:特殊な顕微鏡で見ると分子1個分ぐらいの穴が整列されて開いている。1立方ミリメートルあたり100京個ぐらいの穴があります。

多孔性配位高分子の図

分子1個分のカプセルホテルのような穴をつくると、そこにガスが入り、とどまる。活性炭で臭いが吸着されるのと同じ原理です。物質と物質が近くに寄ると引力が働き、細孔壁面にくっつくような現象が起きます。

井上:それでガスがポータブルに持ち運びができる。ガスをコントロールできるわけですね。

浅利:われわれはCubiTanというガス容器をつくってIoT化しています。

プロパンガスをはじめ、酸素や窒素、二酸化炭素といった高圧ガスが利用されていますが、その配送は必ずしも効率的ではありません。

われわれは、どのトラックが、どのガスをピックアップして、どこに持っていけばいいかを管理したい。既に走っているトラックにピックアップしてもらえれば、無駄なCO2の排出もなくなるし、コストも下がります。

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