驚きのレタスが育つ植物工場は20もの条件を制御 プランテックスの栽培レシピはiPhoneアプリだ

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実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。

植物工場のレタス
栽培装置で育つレタス(プランテックス提供)
南極では新鮮でシャキシャキした野菜が何よりのご馳走だという。人類が火星に移住したとしても同じことだろう。その野菜の栄養価が通常の何倍も高く、味わいさえも全く異次元のものだとしたら、越冬隊の隊員や宇宙飛行士はどんな顔をするだろうか。
そんな未来が現実のものとなりつつある。株式会社プランテックスは異次元の栄養価と究極の野菜の味わいがするレタスの開発と栽培に成功し、画期的な第一歩を踏み出した。
その基盤となるのがSF映画や小説でもたびたび出てくる「植物工場」である。代表取締役社長の山田耕資さんは「厳しい自然環境からこれほど守られた環境下で、人類が植物を育てた経験はまだ乏しい。ここから新しい産業が生まれる」という。
果たしてそのチャンスはあるのか、将来の可能性について語ってもらう。

井上:御社の事業について教えてください。

山田:簡単にいえば、いわゆる植物工場事業です。今、食料生産が危機的な状況にある中で、効率よくかつ安定的に植物を作ることが課題になっています。

われわれは、この新しい技術に日本のものづくりの技術を組み込むことで社会に貢献すことを目指しています。持続可能で、安心・安全で、食としての高品質なおいしい食料をつくります。

井上:ズバリ、植物工場の価値って何でしょうか。

味わいも、有用成分も増したレタス

プランテックス山田耕資代表取締役社長
山田耕資(やまだ こうすけ)2007年に東京大学大学院卒業後、ものづくりの生産工程改革で有名な株式会社インクスに勤務。同社の民事再生申請時には、再生計画案を作成。2010年以降、日米計6社のベンチャーの創業に参加。2013年末に、人工光型植物工場と出会う。世界の食と農に革新をもたらす技術だと確信し、創業を決意。エンジニアリングの分野で卓越した実績・スキルを持つメンバーらと共に、新しい産業を興すことを目指して2014年6月に株式会社プランテックスを創業(プランテックス提供)

山田:生産時に投入される各種資源の利用効率を高められることが一番の価値だと思っています。

食料の需要増とともに、食料生産に欠かせない水や肥料などの投入資源が逼迫しており、深刻な課題となっています。また、季節や天候の影響を受けずに生産が可能となることも、気候変動や異常気象に対して食料生産を強靭化するのに役立つだろうと期待されています。

それらに加えて、食の面では、野菜本来の味であるとか、高い品質、安定した供給などが大切です。しかしそれ以外にも、植物工場によって機能成分の含有量もさまざまにコントロールできることがわかってきた。そこで作られた野菜は、サプリメントみたいな性質を持った商品として売られるようになるかもしれません。

例えば、ポリフェノールやギャバ、ルテインなどを多く含んだレタスやほうれん草などですね。栽培環境条件をコントロールすることで、植物の本来のポテンシャルをもっと引き出して、もっと多くの有用成分を含んだ状態で栽培する。

実際、私たちが育てたレタスの成分を測ったら、βカロチンがニンジンの半分ぐらいありました。味わいも濃くて「野菜本来の風味がしっかりと出ていますね」と驚かれます。

近い将来には、医薬原料になるような成分も作れるようになると思います。植物工場だと、ある成分の含有量が数百倍の濃度で含まれた状態で栽培されるような研究結果も出てきています。希少な成分も安定的に市場に供給できるようになる。新しい医薬品の市場が生まれるかもしれません。

井上:それはすごいですね。どのような技術によってそれが可能になるのでしょうか。

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