山田:従来の植物工場というと、制御が徹底しているイメージがありますが、そこからもう一段階進めています。
われわれの装置は密閉型の栽培装置なので、きわめて緻密な環境制御ができます。20個の環境条件を個別にかつ正確に制御しているんです。
![密閉型植物工場のイメージ図](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/1140/img_da4cddfc9e34df5d366adf65a918119197671.jpg)
その環境条件パラメーターの中には、たとえば温度とか湿度が含まれますけど、それ以外にも風の強さとか、水が流れる速さとか、そういったものも植物の成長にものすごく影響することがわかっています。
井上:どのようにして20もの環境条件パラメーターを見つけたのでしょうか。
山田:植物工場内に投入する資源と、そこから出てくるアウトプットの関係性を数式化しました。そこから、植物の成長管理にとって大事な20の環境条件を抽出し、管理するべき条件として定義しました。
20の環境条件以外にも、われわれの技術の中では、例えば光合成速度とか、あるいは植物が水や肥料を吸収する速度などを指標化し、タイムリーに測っています。植物の成長をダイレクトに計測することで、安定的な管理が可能になります。
これらの技術はクラウドシステムを通じてサービスとして提供しています。
温度、光、湿度・・・緻密に制御するには装置も自前
井上:20の条件の最適解は見つかっているのでしょうか。
山田:現在見つかっている中での最適条件というのはありますが、膨大な研究開発の余地が残されていると思っています。20の環境条件は、それぞれが最適解を持つのではなく、複雑に関連しています。
例えば温度一つ取っても最適な温度というのは決められず、例えば湿度や光の強さが変わることによって最適な温度はさまざまに変わります。植物の成長メカニズムはまだまだ未知ですし、とても複雑です。
井上:ノウハウとソフトだけで勝負するという選択肢もあったと思います。なぜ、投資がかさむハードに踏み込んだのでしょうか。
山田:われわれも、最初はソフトだけでビジネス化できないか考えていた時期もありました。既存の植物工場にソフトをつなげて生産性向上などのコンサルティングなども取り組みました。
その時に思ったことは、もっと環境条件を緻密に制御して、正確なデータをとって、植物の成長に対する理解を深めることで、植物のパフォーマンスをまだまだ高められるのではないかということでした。そこで、自分たちが理想とするハードウェアを開発することになったのです。
開発を進めるなかで出てきたアイデアが、密閉型の栽培装置です。緻密な環境制御に適した構造をいろいろと考えるなかで、そのような新しいアイデアが出てきました。開発した試作機で野菜を育てたら、レタスの生産性が5倍ぐらいに跳ね上がりました。
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